第5話 しおんの独白

 好きになると、その人の色んなことを知りたくなる。

 知れば知るほど好きになる。


 でも私はちょっと違う。


 



 私は一般的にとても性格が悪いのかも知れない。

 悪口は人前で言わないが、いつも心中では貶している。

 人をバレないように蹴落としたり、突き放したり。

 だから私には友達という友達がいない。



 そんな私でも好きな人はいる。



 舞原結衣まいはらゆい


 出会ったのは小学1年の時。

 私とゆいは知らないうちに仲良くなっていた。

 それからよく遊ぶようになって、ゆいは私のになった。

 そして、いつだったか、手を繋いで家まで帰った時に気づいた。


 手を繋ぐと


 その時の景色、感情、匂い、音、味。

 全てが私の頭に流れ込んでくる。そんな感覚が私を襲った。

 初めの方は少し気分が悪くなることがあったが今は慣れて、ゆい以外の人でも手を繋げば人の頭の中を見れるようになった。


 でも、その見れる記憶の量は、私がどれだけその人に興味があるか──つまり、どのくらい私がその人のことを好きかで決まるらしい。

 だから私は色々な人に愛想良く接しているんだが、勘違いする人が多すぎる。




 私はゆいの記憶を見る度にゆいを好きになった。ゆいを好きになる度に色んな記憶が見れるようになった。その度に好きになった……


 連鎖した。

 そして、私は知った。


 ゆいの能力を。


 私はこれは上手く使えそうだと思った。


 結果、上手く使えた。


 私はゆいを愛している。

 この世の誰よりも。家族よりずっとずっと。

 自分のことよりもゆいを愛している。


 だからこそ、破滅は避けたい。



 ──邪魔なハエは叩かなくちゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る