第2話 秘密

 私には魔法がかかっているのだと思う。


 いやそんな大袈裟なものではないのかもしれない。


 でもそれくらい大きな十字架を背負っているのかもしれない。


 人は皆、誰かを頼り、誰かに頼られたりで生きている。


 助け合いの精神なんて言う可愛いものでは無い。


 承認欲求やら、お金のことやら、真っ黒いやり取りもだ。



 私は1人が好きだ。


 それは誰にも頼られず、誰も頼らず。


 それが一番気が楽。


 出来ればご飯だって自分で用意したいし、家賃だって自分で払いたい。

 税金だって自分で払いたいし、電気代だって自分で払いたい。


 でもそんなのは高校生にとって無理に等しいことだ。



 人に無償で頼るといいことは、それ相応の見返りが求められるはず。


 それが頼られるということだ。



 当然断ることだってできるが、それは利益の均衡が取れていない。


 当然、頼ることと頼られることを天秤にかけて釣り合いが取れるようにする人は居ないだろう。



 ──でも私は違う。




 頼ることと頼られることのバランスを取らなくてはならないのだ。



 それは瞬時にということでは無い。


 例えば消しゴムを貸してもらったとしたら、今度ペンを貸してあげるまでその人に頼ることが出来ない。


 誰かに10万を借りたとしたら、その人に10万を返すまでその人に頼ることが出来ない。



 それは一人一人引き継ぎはされていないため、個々で済むのは助かる。


 しかし、頼っただけの人が多すぎたり、頼られただけの人が多すぎたりすると、私は体調を崩してしまう。

 それで何度父親を頼ったものだ。



 もちろん1度頼った人に頼られていないのにもう1度頼ったらどうなるのか気になるだろう。


 理屈はわからないが、その相手は必ず断る。


 逆に頼られた相手に何かを頼れば必ず了承してくれる。



 私がこれに気づいたのはつい最近で、友達と話している時に、これが普通じゃないことに初めて気がついた。


 でもこの『能力』のようなものは隠している。


 言ってしまえば何かトラブルに巻き込まれるのは火を見るより明らかだし、友達の信頼も同時に失う。



 だから私は普通に生きていく。



 とは言うものの、今のところそんな悪い使い方もしてないし、特別上手く使ったりもしていない。

 邪魔になったこともないし、まあ信頼の度合いがみんな同じなのかなあって感じ。


 それでも例外はあった。


 家族だ。


 実の父親だけは違った。


 父親だけは何度頼っても頼り続けられる。


 理由はよく分からないが、血が繋がって居るからとかそういうことだろう。


 まあ今のところそんなに生きづらくも無いし大丈夫でしょ!




 そう思った。

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