第7話 プロレス
「こんなチャンスなんて滅多にないのに、あのメールは酷すぎるわ。ひょっとしたらワンチャンくらいあったかもしれないのに、自ら墓穴を掘ったな?どうしても我慢できなかったの?」
自身の過ちを猛省し奮起を促すつもりで、僕はあえて悲観的な言葉を辛辣に放った。
「でも、まだ分からないじゃん?今回はおれだって勇気を出して攻めてみたんだから・・・・・・」
彬もたまらず反論を試みたようだが、しかし内心では少なからず、「早まったかもしれない」と感じているのだろう、その声音は次第に弱々しく尻すぼみになった。
事実彼によれば最初のうちはあった返事も、4日ほど前に「?」で終わらせたにも関わらず、今日に至るまで一切音沙汰がないのだという。
「それで、どうするの?」
「返事がくれば、またメールするつもりだけど?」
「無かったら?」
「無いのにまたメールする訳にはいかないでしょ?」
「別にそんなことはないんじゃない?メールしたけりゃすればいいし、したくなければしなきゃいいだけのことで。っていうか、そもそも受け身ではなく自分から積極的に動かない限りどうにもならんよ?そこんとこ分かってんの?」
明らかに腰が引けた彬にうんざりした僕は、自然と言葉に怒気が帯びた。
彬に対して高圧的な態度でことごとくダメ出しをする様子は、
きっと僕が偉そうに説教しているように映るだろうし、ひょっとすると彬のことを気の毒にすら思うかもしれない。
確かにその通りではあるのだが、しかしこの一連のやり取りは僕らにとっては日常的な、いわばプロレスなのである。
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