第6話 容姿

 「それはそうと、その桂子って可愛いの?」

 小池と鈴木の反応からして、とてもそうは思えなかったがにはということもある。

 下世話なのは承知しているが、やはりそこは気になるところだ。また僕としては彼女の姿をできるだけ具体的にイメージした方が、彬に対してもよりリアリティをもってアドバイスできると考えたのである。


 容姿によって彼女がどういう環境におかれ、またどういった性格の持ち主であるか、想像の域を出ないまでもその傾向くらいは見当がつくはずだ。彬の今後の出方を占うえでも、それは欠くことのできない重要な要素に思えた。


 「可愛いとか美人って訳ではないよ?」

 予想はしていたが彬はこともなげにさらっと言ってのける。


 「じゃあブスってこと?確かにおまえは昔から面食いではないけど」


 「いや、ブスではないから!ただ美人ではないってだけ!」


 「ブスではない」と頑なに否定する一方で、「美人ではない」と言うあたり、恐らくは十人並みかともすればそれよりは劣るのだろう。


 「例えばタレントでいうと誰に似てる?」

 ベタな質問だが、「ブスではないが、かといって美人でもない」というのでは、いまひとつ彼女のイメージがつかめない。


 「タレントではいないかな?しいていえば市松人形?髪型はそんな感じだったよ?歳をとった市松人形かな?」

 頭を傾けて考えた挙句、褒めているのか貶しているのか彬はそう口にした。

 だがしかし言い得て妙というべきか、おぼろげながらも何となく桂子の姿がイメージできたような気がする。


 日頃から口の悪い僕は、若いアイドルに夢中になっている彬に対して、「このロリコン野郎!」などと冗談とはいえ酷い言葉を浴びせていた。しかしだからこそ、そんな彼が年上で容姿も年相応の桂子に対して好意をもったことが意外に思えたのだ。

 容姿はさておいても彬は女性の年齢には相当に拘りがあるらしく、「女は若ければ若いほど良い」と言ってはばからない。それゆえ僕は余計に彼女に惹かれた彼の真意を測りかねた。


 「もちろん若いに越したことはないけど、性格が良さそうだから」

 率直に疑問を投げかける僕に対し、彬はそう答えたがどうも腑に落ちない。


 穿った見方かもしれないが僕なりに納得できる理由を探すと、一つには女性と出会う機会自体が滅多にないことが挙げられるだろう。つまり言い方は悪いが「手当たり次第」、「来るもの拒まず」的な構えでいるのではないか。

 より正確にいえばなどハナからいないのだが、だからこそ余計に折角訪れた女性との出会いをみすみす無駄にはしたくない。そういう打算が根底にあるように思えてならなかった。

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