第5話 化粧っ気が無い
酒もすすんで徐々に顔を赤く染めるにつれ小池と鈴木は面白半分なのだろう、彬を囃し立てるようにして桂子と連絡先を交換するようけしかけた。
いわれてみればそういう状況でもない限り彬が自ら積極的に女性に対して連絡先を尋ねるとは思えない。
珠緒はというと、そもそもが男勝りで鷹揚な性格のためか、「勝手にすれば?」とのスタンスで傍観者を決め込んでいたようだ。
僕も彼女とは学生時代に何度か顔を合わせたことはあったが、たしかにその当時から良くいえばクールでマイペース、悪くいえば素っ気ないほど愛嬌は皆無で、格好にしてもいつも白いTシャツにジーンズ、化粧っ気もまったく無かったのを覚えている。
彬いわくそれは今でも変わらないようで、また「類は友を呼ぶ」ではないが桂子も同様に化粧っ気は無かったという。更に彼女に至っては、あろうことか部屋着と見まごう様な格好で現れたという。
上下揃いのスウェットに、アウターとして羽織っていたベンチコートは縫い目がほつれて中から羽毛が盛大に飛び出していたほどらしい。それを聞くと小池と鈴木が桂子に対して早々に興味を失くしたのも納得がいく気がした。
ただ一方で性格については珠緒と違い、おっとりとして見た目は年相応ながら、話しぶりやその雰囲気はやけにあどけなく映ったようで、それゆえ彬も少なからず好感を抱いたのだろう。
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