第3話 発端

 そもそもの発端となったのは、彬がとある飲み会に顔を出したことにはじまる。

 大学時代のゼミの同期で、現在は伊勢に住む中山珠緒なかやまたまおが友人を引き連れて東京へ遊びに来るというので、折角だからこの機会に彼女を囲んで旧交を温めようと急遽有志で集まることになったのである。面子としては彬をはじめ幹事を務める小池に鈴木、珠緒とその友人である。


 最初に珠緒から上京する旨の連絡を受けた小池によると、「珠緒が連れてくる友人というのは、どうやら女医らしい」とのことで、彬にすればそれを聞いた以上は好奇心の虫が疼くのもやむを得ないことだろう。

 そうなると彼らにとっては珠緒との再会よりもむしろ、「友人とは一体どんな女性だろう?」と、そちらの方に胸を膨らませることとなった。


 さて、当日は小池によって池袋にある居酒屋の個室が用意され、彬はもちろん彼ら男性陣はそわそわしながら珠緒と、何よりもその友人が現れるのを心待ちにした。

 珠緒から事前に独身で、彼氏もいないとの情報がもたらされていたこともあり、同様にいまだ独身で彼女のいない男三人は固唾を飲んで待ちわびたに違いない。

 約束の時間をいくぶんまわった頃、ようやく珠緒が友人を伴なって現れついに初対面を果たすことになった。仲間内とはいえ事と次第によってはまさにメスを巡る熾烈な争いが勃発してもおかしくない事態である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る