第19話「火炎」
突入B班はとは五分ほどで合流した。
B班もA班と同じく、4名の機動部隊員と、1名の組織犯罪対策部の刑事が帯同している。
「キミらは外周だから防弾チョッキも着ていないだろう。後方に位置して、銃撃戦になったら隠れておくんだぞ」B班の班長は言った。
「我々は出口を探している。窓という窓はすべてシャッターが閉まっている。一応出口を探し、それでも見つからなければシャッターを破壊しても脱出する予定だ」
「すぐに壊さないのですか?」平治が訊いた。
「本部から、施設の破壊はできるだけ避けろと指示が出ている。」と班長は言った。
「そんなこと言ってもこんな状況じゃあ…」垣が口をはさむ
「仕方ないんだ。厳命だよ。ギャングは抵抗したら射殺していいが、不要に施設を壊すなと厳命されてる。さらに言えば、壊すと生産性が落ちるような製粉機だけは人質と同じように扱えとな。下手すりゃボーナスカットすると花谷中隊長は言ってたぜ。」と班長が言う。
垣が平治に耳打ちした「おい、普通はこんな指示あんのかい?」
平治は肩をすくめる。
「理由は聞かない、命令には従うのが警官や軍人のやり方だ」
B班に合流した平治達は、出口を探し、施設の裏側である集荷場へ向かった。
集荷場であれば、集荷用の出口や車両の出入り口も多数と見て向かったのである。
用心して、銃を取り出したまま一向は廊下を歩いた。
不思議と誰一人出くわさない。
特に何も起こることなく、集荷場へ到着した。
集荷場への扉を開く。
集荷場へ運び込まれる食品のためか、空調が作動して冷蔵庫のように寒い。
そして両開きの集荷場扉も堅牢で気密性を保持するため分厚い作りである。
集荷場扉を全員が侵入する。
集荷場内は真っ暗で、何も見えない。
ひんやりと寒い。
B班の班員たちは耳を澄ませる。
空調の空気を吐き出す音以外は何も聞こえない。
「ライトつけろ」班長が言って、一人の班員がライトをつける。
ライトの先には人影が写った。
「人がいます!」
「警察だ!動くな!」班長は人影の方へ怒鳴った。
その瞬間、集荷場の電灯が全て点灯した。
点灯した瞬間、広い集荷場が面前に広がった。
そして、目の前には、溶接マスクのような、マスクをつけ、武器のようなものを所持し、砲身をこちらへ向けているものがいた。
都市迷彩服に、赤いスカーフを巻いている。
平治はとっさに、そいつが先ほど裏口で見かけた男と分かった。
溶接マスクの背中にはやはり2つひと組のタンクが背負われている。
溶接マスクの両脇に、それぞれ人相の悪い男が1人ずつ、ピストルを警察に向けて立っている。
「ようこそ。台マル製粉東区工場へ」溶接マスクが言った。そして、皮肉めいた声で「正義のおまわりさんたち・・」と言った。
「武器を下ろせ!」班長が叫んだ。「捜索令状を執行した。今からここを捜索する。邪魔をすると撃つぞ」
「不当な法律、不当な実力行使には応じる必要はありませんよ。オマワリさん」と溶接マスク。
「不当ではない!令状も執行した、有効な職務執行だ」と班長
平治は膝を軽くまげ、ホルスターに手を伸ばした。
そして、「いつでも逃げれるようにしろ」という意味で、横にいる垣を見ずに手でつついた。
「そう。じゃあどうする。」溶接マスクが言った「俺たちは不法侵入者を撃退しようと思ってる」
「おい!ふざけんのもいい加減にしやがれ!」帯同する刑事が怒鳴った。「てめえら、現時点で職務妨害だぞ!それに武器の所持許可はあんのかよ!」
「許可?ありますとも」と溶接男。両脇の二人は、きょとんとしている。持っていないのかもしれない。
「ほら!出せよ!ここで撃ち合ったってしょうがねえだろ!」刑事は、微妙に論点をずらし、撃ち合いから敵の意識を散らそうと必死になっていた。撃ち合いさえ避ければ、せめて人命の損失はなくせるかもしれない。
「でも刑事さん」と溶接マスク「不法侵入者にわざわざ許可証を見せてあげる必要あります?先般も、警察の特殊部隊が雑居ビルを吹っ飛ばしましたよね。俺はね、警察のやり方に疑問を持っているんですよ」
「それとは別だろ!とりあえず、その物騒なものを下ろせ。話し合おう、その方がお互いのためだ」と刑事
「俺たちがこの武器を下ろして、あんたらに渡したらどうする?俺たちを撃たないと約束できますか?」
「ああ、約束する」
「信用できねえな。なんせ、こないだの爆発で俺の知り合いも家が吹っ飛んじまったんでね」溶接マスクは笑いながら、所持している武器…火炎放射器の吹き出し口に着火した。
「おい!やめろ!」刑事が怒鳴る。
熱が距離のあるB班にも伝わってくる。
平治は素早く視線を動かす、右方に止まったトラックがある。
段差を飛び降りたらすぐ傍らに行けそうだ。
火炎放射器はにやついて、2、3度軽く炎を吹き出した。
周囲がオレンジ色に明るくなる。
「さあ、さあ。オマワリさん。さっさと帰んなよ。ケガしないうちに」と溶接が言う。
「やめろと言っている!」刑事が叫ぶ、そして、刑事は「撃つぞ!」と叫ぶと、右斜め上方の方へ威嚇射撃した。
パーンと乾いた音がした瞬間だった。
「警官が撃って来たぞ!」溶接マスクは高らかに叫ぶと、B班に砲口を向け、火炎放射器を噴射した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます