第8話 お隣のお家。

入園式の次の日は休みだった。

園児に疲れを残さないためらしい。

…俺もこれからの事の心労で死にそうだった。


まぁ、そんなことも今日は考えなくて済むと思れば、なんとかなりそうだ。


そうこうしていると、

「れいちゃーん、お隣さんとご飯に行くわよー。」

と、母さんが俺を呼びにきた。


そうして、俺の休みは消えた。


「玲司、どうした?そんな疲れた顔をして」

……あんたのせいだよ、

なんか身体も疲れてきた。


こんなに疲れてるのは

……昨日のキスもあんのかなぁ。


結局、あの後、お互い照れて何も話せないまま、終わった。

その後、両親からは、特に何も言われなかった。


…今、思ったけど、なんで、うちの両親は

『何も』言ってこなかったんだ?

普通なんか言ってこないか?


例えば、どんな感じだったか?とか、どんな気持ちか?とか色々。

……キモいな。


う〜ん、でも、両親が何を言ってくるのか、全く『予想』がつかないなぁ。

まぁ、いいや。


そうこうしていると、家の近くのレストラン

「ムーリド」に着いた。

ここには来た覚えがないが、なんだか懐かしく感じた。


店に入るとすぐに、店員さんが来て

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

と、訪ねてきた。


それに対して、父さんは

「福川さんと待ち合わせをしているんですが、」

福川というのは、お隣さんの名字だ。


「福川さんですね、少々お待ちくだ…」

言い終える前にレストランの奥から、


「ちょっと、ユキちゃーん、その人は私のお友達よ〜❤️」

という、男性の声が聞こえてきた。


この声の主は、中山剛志という、ゴツい名前の人で、この店の店主だ。

そんで、お隣の福川成幸さんと父さんは

昔からの、親友らしい。


席に案内されて、すぐに

「れいじくーん!!」

と、言いながら、よちよち歩きの女の子が俺の元にやって来た。


この子は福川成幸さんの娘さんで、福川杏奈ちゃん二歳だ。


「あんな〜、れいじ…く……んに、あえて

…うれしい……よ。」


どうしたんだ?いつもと様子が……


「れいじくん、なんで、ほかの女の子の

けはいがするの?」

そう言いながら、俺の胸元を他の人にバレないように掴み、詰め寄る杏奈。


この子は、愛の深い子だった。

この子の『印象』は薄くて、忘れていた。


俺の人生は波乱だらけだ……。


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