第69話 かつての強敵
「ぎゃあああっ!?」
「ひぃいいいっ!?」
「うぎゃあああっ!?」
「くそっ、離れろ!!」
盗賊達の元にゴブリンの群れが群がり、彼等は身体のあちこちを噛み付かれ、骨ごと食いちぎられる。助け出す暇もなく、盗賊達は瞬く間に数十体のゴブリンの餌と化した。
コウは盗賊達の無残な光景を見ていられずに顔を反らし、一方で彼の元にもゴブリンが近付こうとしていた。唯一に武器を所持しているコウに警戒していたゴブリン達だったが、その内の背丈の高いゴブリンが指示を出すと彼にも襲い掛かる。
「グギィッ!!」
『ギィイイイッ!!』
「……来い!!」
自分にも襲い掛かってきたゴブリンの群れに対してコウは黒斧を振りかざし、自分に飛び掛かってきたゴブリン達を薙ぎ払う。彼の一撃で数匹のゴブリンが肉体を切り裂かれ、肉塊と化した死体が地面に落ちる。
「ギャウッ!?」
「ギィイッ!?」
「ギィアッ!?」
「ふんっ!!」
仲間が一撃で何体も敗れた姿を見て他のゴブリンは立ち止まるが、コウは自ら踏み込んで他のゴブリンも蹴散らす。彼の強さに気付いたゴブリン達は怖気づき、慌てて距離を置く。
「ギィイイイッ!?」
「グギィッ!!」
「ギャウッ!?」
しかし、逃げ出そうとしたゴブリンを背丈の高いゴブリンが殴り飛ばし、それを見た他のゴブリンも立ち止まる。この時にコウは背丈の高いゴブリンを見てある事を思い出す。
(あいつ……もしかして上位種か?)
魔物の中には他の魔物を喰らい続ける事でより強力な肉体や能力を得られる種が存在し、ゴブリンの場合はホブゴブリンと呼ばれる存在へと進化を果たす。
ホブゴブリンは通常種のゴブリンよりも背丈が高く、知能も発達して他のゴブリンを従える傾向がある。コウも噂で聞いただけで実際にホブゴブリンを目にするのは初めてだった。
(どうして上位種がこんな所に……いや、今は考えるな。あいつを倒せば群れは群れは瓦解するはず!!)
ホブゴブリンがゴブリンを率いているのならば、群れの頭であるホブゴブリンを倒せば残されたゴブリン達は指示を与える者が消えて統率が取れなくなる。そう判断したコウは黒斧を握りしめ、ホブゴブリンの元へ向かう。
「うおおおおっ!!」
「グギィッ!?」
『ギィイイイッ!!』
自分に向かってきたコウに対してホブゴブリンは身構えると、他のゴブリン達が率先してコウの前に立ちはだかる。群れの頭を守るためにゴブリン達は自ら動いた事にコウは驚くが、彼は構わずにゴブリン達を蹴散らす。
「どけぇええっ!!」
『ギャアアアッ!?』
石斧や棍棒を構えたゴブリン達だったが、コウの怪力から繰り出される黒斧の一撃に耐え切れず、武器ごと破壊されて吹き飛ぶ。粉々に砕けた棍棒の残骸や割れた石斧と共にゴブリンの群れも吹き飛び、それを見たホブゴブリンはコウに脅威を感じ取る。
「グギィイイッ!!」
「ギィイッ!!」
「ギィアッ!!」
「うわっ!?離れろっ!!」
コウの背後からホブゴブリンの指示を受けたゴブリンの集団が飛び掛かり、コウの足や腕に纏わりつく。ゴブリンがコウを抑えている隙にホブゴブリンは逃げ出そうとするが、コウはゴブリンに纏われながらも後を追う。
「逃がすかぁああっ!!」
『ギィイイイッ!?』
「グギャッ!?」
何体ものゴブリンに纏わりつかれようとコウは剛力を発揮して構わずに駆け出し、この時に足に纏わりついていたゴブリンは踏み潰されて地面に転がり込む。腕に絡みついていたゴブリンも近くの木に叩きつけられ、血反吐を吐きながら倒れ込む。
剛力を発動したコウにとってはただのゴブリンなど足止めにもならず、ホブゴブリンは慌てて逃げ出そうとするが森の中を移動する事はコウの方が得意だった。山や森で狩猟をし続けたコウにとっては森の中の移動は得意としており、ホブゴブリンの背後に追いつくと彼は黒斧を振り下ろす。
「くたばれっ!!」
「グギャアアアアアアッ!?」
『ギィイッ……!?』
ホブゴブリンの背中に目掛けてコウは黒斧を振り下ろし、一撃でホブゴブリンの肉体を切断した。背中を切り裂かれたホブゴブリンは断末魔の悲鳴を上げて倒れ込み、それを確認したコウは黒斧にこびりついた血を振り払う。
(倒した……意外と呆気なかったな。それにこの武器も大分慣れてきた)
かつては命を懸けて戦ったゴブリンを相手に全く苦戦せず、今のコウにとってはゴブリンの上位種さえも敵ではなかった。コウは改めて残ったゴブリンの群れに視線を向けると、ゴブリン達は怯えた表情を浮かべる。
「まだ、やるか?」
『ギィイイイッ……!?』
コウの言葉を理解しているわけではないが、彼の雰囲気を察して意味を理解したゴブリンの群れは恐れおののく。自分達を統率する頭が消えた事でゴブリン達はどうすればいいのか分からずに困っていると、ここで突風が森の中に駆け巡る。
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