第33話 能力付与の階級
――数分後、状況を理解したリンという名前のメイドは顔色を青くなり、危うく自分の使える主人の娘の恩人を傷つけるところだったと知って謝罪を行う。
「申し訳ございませんでした!!」
「いや、別にそこまで謝らなくてもいいですけど……」
「ご、ごめんね……うちのリンちゃん、ちょっと思い込みが激しい所があるから」
「兄ちゃん、こいつら全員縛り付けたぞ」
深々と頭を下げて謝罪してくるリンにコウは何とも言えない表情を浮かべ、リンの隣でハルナも謝まる。その一方でネココの方は気絶した盗賊と警備兵を何処からか取り出した縄で縛りつけ、この時に彼女は警備兵の男の身体を探って目当ての物を回収する。
「おっ、やっぱりあった!!へへっ、こいつやっぱり能力付与された腕輪を付けてやがった」
「能力付与?そういえばさっきもそんな事を言ってたけど……」
「何だよ兄ちゃん、能力付与の事も知らないのか!?よっぽど田舎から来たんだな……」
「やかましい、猫耳引っ張るぞ」
「あたたたっ!?ちょ、分かったから!!ちゃんと説明するから!!」
生意気な事を言うネココにコウは猫耳を引っ張ると、彼女は慌てて「能力付与」の説明を行う――
――能力付与とは文字通りに武器や防具、あるいは装飾品などの道具に魔法の力を付与させて能力を上昇させる事ができるとネココは答えた。例えば警備兵が装着していた腕輪は「防魔」の効果が付与され、この防魔の能力が付与された腕輪を装着すると外部からの攻撃を軽減する効果があるという。
実際にコウも警備兵と戦った際に何度も見えない壁というか膜のような物に阻まれ、攻撃の際に勢いが殺された事は自覚していた。防魔の効果は装備した人間が攻撃を受ける直前に身体全体に目では見えない「防護膜」のような物を纏い、そのお陰で攻撃の威力を弱める事ができる。
但し、攻撃を完全に無効化できるというわけでもなく、あくまでも一定の攻撃力を通さない程度の効果しかない。実際にコウの攻撃は勢いは殺されたが全て警備兵に的中しており、これはコウの攻撃力が男の装備している防魔の腕輪の効果を上回った事を意味している。
しかし、仮にもしもコウの攻撃力が防魔の腕輪よりも劣っていた場合、彼は警備兵に触れる事もできなかった。但し、防魔の腕輪は全ての攻撃に対応するわけではなく、相手がゆっくりと近付いて触れてきた場合は効果は発揮せずに捕まってしまう。現にコウも最後の攻撃の際は警備兵の男を後ろか掴んで地面に叩きつけた際は彼の身体は防護膜に阻まれなかった。
(能力付与……そんな凄い力を宿した装備品もあるのか)
コウはネココに言われた通りに自分が本当に世間知らずであった事を知り、世の中にはそのような不思議な力を持つ装備品がある事を知った。だが、ネココによれば能力付与された装備品は一般人が気軽に購入できる代物ではなく、普通に生きていく人間にとっては無縁の代物である。
「へへっ……この腕輪ならきっと銀貨数十枚ぐらいで売れるぜ」
「銀貨!?それも数十枚って……そんなに高く売れるもんなの?」
「何言ってんだよ兄ちゃん、これを装備するだけで鋼鉄の鎧を身に付けてるようなもんだぜ?しかも本物の鎧と違って全然重くないし、気軽に取り外す事もできるしな」
「能力付与が施された装備品は普通の装備品よりも高値で取引されます。
「階級?」
「何だそれ?」
話に割って入ったリンにコウだけではなくネココは振り返り、彼女も階級という単語は知らない様子だった。リンは能力付与が施された装備品の階級に関する説明を行う。
「全ての能力付与が施された装備品には階級が存在します。この階級が高いほど能力の効果が高くなり、高額で取引されます。階級は一番下から「C」その上が「B」その上が「A」そしてさらに上が「S」です。ちなみに階級がSの装備品は伝説級とも呼ばれ、国家予算で取引されています」
「国家予算!?」
「へえ~……あたしも知らなかった」
「凄いよね〜」
装備品の階級の話を聞いてコウ達は驚き、改めて警備兵の男がとんでもない装備品を持っていた事を知ったコウは冷や汗を流す。もしも警備兵の男が元々装着していた腕輪よりも階級が高い装備品を身に付けていたらコウは手も足も出させずに負けていたかもしれない。
「まあ、皆さんの話の聞く限りではその腕輪の階級は恐らくはCでしょう。C級の防魔の腕輪ならば銀貨30枚といったところでしょうか」
「えっ!?Cと言う事は一番性能が低いんでしょ!?それなのに銀貨30枚で売れるの!?」
「階級が低いといってても並の装備品とは一線を画す代物である事は間違いありません。売り方によっては更に高額の値が付けられる事があります」
階級が一番下のC級の腕輪でも銀貨数十枚の価値を誇ると知り、コウは驚きを隠せなかった(ちなみにこの世界の銀貨の価値は現実世界でいう所の「一万円」ほどであり、銀貨数十枚は数十万円の価値を誇る)。
※休日なので1話多めに出します
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