第31話 能力付与の腕輪
「くっ!?」
「ぐふぅっ……な、何だお前は!?」
殴りつけられた警備兵の男は大きく後ろに仰け反り、一方でコウは拳に違和感を覚える。男を殴りつける際、何やら見えない壁のような物に阻まれた気がした。
(何だ!?今の感触……何を殴ったんだ!?)
コウは男を殴りつける際に見えない何かに阻まれた事を知り、そのせいで全力で男を殴りつける事ができなかった。彼の力ならば鋼鉄の鎧だろうと当たれば凹ませる事はできるが、攻撃を受けた警備兵は後ろに仰け反った程度ですぐに体勢を持ち直す。
先ほど指弾を撃ち込んだ際も警備兵の頭部に的中したが、盗賊は気絶したのに男は額の部分に軽い痣ができた程度だった。この事からコウは違和感を抱き、試しに彼は落ちていた石を拾い上げて投げつける。
「このっ!!」
「うおっ!?」
石を投げつけてきたコウに対して男は慌てふためくが、石が彼の顔面に当たる寸前に勢いが殺されて狙いがずれて警備兵の被っていた兜に衝突した。
「なっ!?」
「ぐあっ……こ、このクソガキが!!」
「兄ちゃん、気を付けろ!!そいつきっと能力付与がされた装備を身に付けてるんだ!!」
「能力付与!?」
一部始終を見ていたネココがコウに注意すると、彼女の言葉を聞いてコウはどういう意味なのか尋ねる前に今度は警備兵の方が動く。腰に差していた剣を抜き、コウに目掛けて振り下ろす。
「死ねっ!!」
「うわっ!?」
「あ、危ない!?」
「逃げろ兄ちゃん!!こいつマジで殺す気だぞ!?」
激高した警備兵はコウに目掛けて剣を振りかざし、それに対してコウは後ろに跳んで回避した。頭に血が上った警備兵はコウを本気で殺すきで剣を振りかざし、それに対してコウは冷静に相手の動きを見て攻撃を躱す。
(こいつ、頭に血が上り過ぎて動きが単調になってる。これなら避けられるけど、どうすればいいんだ!?)
怒りのあまりに警備兵の男は大振りで剣を振りかざし、その動きを見てコウは冷静に対処すれば避けるのは容易かった。ゴブリンと戦った時の方がまだ緊張感はあったが、かといって避け続けても勝ち目はない。
理由は不明だがコウが攻撃を仕掛けようとすると何故か攻撃の途中で見えない壁のような物に阻まれ、全力で攻撃を振り切る事ができない。先ほど殴り掛かった時もまるで見えない何かに腕を掴まれたかのように振り切る事ができず、そのせいで拳を痛めてしまった。
(こいつを倒すにはどうしたらいいんだ……待てよ、そういえばさっきの奴等が持っていた武器を使えば!!)
コウは先ほど自分が倒した盗賊達に視線を向け、まだ意識は戻っていない。彼等の中には武器を所持する物も存在し、その中でコウが手慣れている武器を持っていたのは太った男だった。
「これ借りるよ!!」
「ぶひっ!?」
「なっ!?て、てめえっ!!」
太った男の元にコウは駆け込み、この時に男の背中を踏んでしまったが彼が落とした手斧を拾い上げる。手斧ならば山に出向く時によく携帯しており、コウが武器を手にすると男は焦った表情を浮かべた。
「行くぞっ!!」
「くそガキがぁっ!!」
「危ない!?」
「兄ちゃん、やっちまえっ!!」
手斧を掲げて突進してきたコウに対して警備兵は剣を振りかざし、それを見ていたハルナは両手で顔を塞ぎ、ネココは応援の言葉を送る。コウは相手の剣の動きを見て手斧を振りかざし、全力で叩き込む。
「だぁあああっ!!」
「うぎゃあっ!?」
コウの怪力から繰り出された手斧の刃を受けた瞬間、警備兵の剣は弾かれるどころか刃が折れてしまう。この時にコウは先ほど違って見えない壁に攻撃を阻まれなかった事に気付き、先ほど鎧越しに攻撃を仕掛けた時も何かに阻害されたが今回は平気だった事に不思議に思う。
だが、考えている暇はないのでコウは手斧を手放して警備兵の元に向かう。そして右拳を振りかざし、再び殴りつけようとした。
「喰らえっ!!」
「ひいっ!?」
「行けぇっ!!」
警備兵の男は再び殴りつけようとするコウを見て恐怖で表情を歪め、それを見ていたネココは声を張り上げる。しかし、攻撃の寸前でコウは右拳を寸止めした。
「……なるほど、そういう事か」
「……えっ?」
「な、何してんだよ兄ちゃん!?今が好機だぞ!!」
「も、もう目を開けてもいい?」
途中で攻撃を止めたコウに警備兵は呆気に取られ、ネココは焦り、ハルナは呑気そうに眼を開いても大丈夫か尋ねる。攻撃を中断したコウだったが、別に警備兵を倒す事を諦めたわけではなく、彼はゆっくりと警備兵に背後に回り込み、後ろから掴みかかる。
「こうしてゆっくり近づけば……邪魔はされないんだろ!!」
「う、うわぁあああっ!?」
後ろに回り込んだコウは警備兵の身体を持ち上げると、頭から地面に叩きつけた。先ほどの寸止めは打撃系の攻撃は途中で阻まれてしまうため、敢えてゆっくりと近付けば見えない壁に阻まれる事もなく警備兵に触れられる事を確認し、密着した状態で力尽くで持ち上げて地面に叩き込むための布石だった。
警備兵は頭から地面に叩きつけられる際、再び見えない壁のような物で彼の頭が地面に衝突する寸前に止まった。しかし、一瞬だけ止まっても意味はなく、すぐに見えない壁は消失して頭から地面に突っ込み、今度こそ意識を失う――
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