第51話 盗賊と魔王

>> ダニエル


へいへい、俺は通常運転。

今日も、空前絶後の大ピンチ。

この世の理不尽、俺が大好き。

俺は大嫌い、理不尽な日常。

すれ違い、ずるしてない、そろそろ勘弁してくれYO!


「……サンドラ……トワイライドを護る筈の貴方が、遠く離れたこの地にいる。その理由は、私の想像通りで良いのですか?」


そうだYO。

おかしいYO。

他国に睨みを利かしている筈の抑止力が留守と分かれば、隣国が黙っていない。

いや、そもそも、地方と緊張が高まっていた筈。

トワイライド王都と此処は、片道で1月はかかる。


……というか、そもそも、どうやって来たんだ?


「ああそうだよ、守護者カリバーン。貴方が護るシルシ、解放させて頂こう」


……お忍びの密会とか、そんな次元じゃないYO!

展開が異次元だYO!


少し前に放浪してたときには、フェンリル発見、死を覚悟しつつ離れようとしたら勇者が出てきて、マジやばかったし……あれ、見つかってたら確実に殺されてたよNE!


昔から、潜伏スキルだけは得意で、こっそり隠れて色々覗くのが好きなんだが。

何故か見てはいけないものに遭遇するのもしばしば。

この前の勇者は極めつけだったが。


まあ、よく考えたら、あれよりはマシだろう。

さっさと離れよう。

自分の命を守るため。


「まだ未覚醒なのに、1人とは……元気な事ですね」


ぼうっ


サンドラを囲むように、魔物が現れる。

大きな狼、大きな鳥、ゴーレム……1体だけでも、脅威だ。

それが5体。


おいおい。

いくら世界最強と名高いサンドラでも、伝説の守護賢人にその守護獣達、では無理だろう。


ざしゅ


サンドラがいつの間にか、狼の近くに。

で、腕が狼にめり込んでる。

狼は絶命しているな。


「そうでもないさ」


HEY! HEY!


これ、DAMEなやつ。

サンドラ、実は魔族ってかあ。


勇者がいたってことは、そうなんだよなああああ。

気づいてたさああああああ。


さて。

訂正。

やっぱり、俺は史上最強にYABAI!


「な、何故……貴様、まさ──」


賢人の言葉は、中断された。

サンドラの背中から生えた触手が、賢人を貫いたのだ。


ごる


そこからのお食事タイーム。

実況は自主規制!

というかぐろいので目を閉じた。

何かを噛み砕く音が。


ややあって。

気配が遠ざかっていく。

そのタイミングで、徐々に遠ざかる。

好奇心から追いかけるような馬鹿な真似はしない。


漏らさなくて良かった。

流石に臭いで気付かれた可能性もある。


無事、距離を取れた。

ここまで来れば大丈夫なHAZU。


さてどこに行くか。

魔王が復活という事は、どこにいても安全な場所なんてない。


ファムディア。

最後に勇者を目撃した場所。

最後というか、最初で最後だけどNE!

ファムディアは、異常な勢いで軍備を拡張しているとか。

内戦の準備かとも思っていたが、実は魔王復活に向けた準備ではないだろうか。

そうなると、意外と安全かもしれん。


勿論、盗賊団などやっていては、速攻で捕まるだろう。

背に腹は変えられん。

しばらくは農業や冒険者でもやって生活費を稼ぐか。

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