第45話 氷女神と順位戦

>> エステル


最初はどうなる事かと思いましたが。

エドラさんは、勇者様と、うまくいっているようです。

魅了も効かないですしね。


ただ、何と言いますか。

ご主人様が、凡人なのに魔改造されて強くなったとぼやいていた件、理解しました。

エドラさん、強くなりすぎです。


元々、国に2人しかいない、最高峰の戦士。

ルーンナイト。

その娘であるエドラさんは、ルーンナイトの素養が有りました。

そんな人物が優秀な師を持てば、化け物にもなりますね。

そろそろ、私の学園2位という地位が、危ういです。


「いきますよぅ!」


ビルギット姫が元気よく、魔法を行使。

複数の雷の槍が生まれ。


次々と飛来。


対するは、エドラさん。

髪を伸ばし、暗殺者の真似事をやめたエドラさんは。

さながら、ヴァルキリーのよう。


「ん」


決して弱い訳ではない、その魔法は。

エドラさんの結界に阻まれ、散る。

ルーンナイトの守護結界。

あれを突破できない攻撃は、意味がない。


そして。


しゅ


エドラさんの姿が、高速に移動。

辛うじて姿は追えるけれど……ぎりぎり。

エドラさんは、ビルギット姫の前に移動すると、


ちゃ


剣を抜刀。

ビルギット姫に突きつける。


「そこまで!」


歓声。

ビルギット姫の学園3位。

それが崩れた。


「そ、そんなぁ……お父様に怒られますぅ……」


ビルギット姫が、崩れ落ちる。


「エドラは、伸びが凄まじいな。あれが、優秀な師とやらの影響か?」


サンドラ様の問いに、


「ええ。本当に見違えますね」


そう答える。


勇者様。

ご主人様を鍛えた方。


私も、ご主人様に色々教えて頂き、強くなった自負は有りますが。

エドラさんの伸びはすごいです。

聞いたところ、ご主人様ではついていけなかった様な過酷な特訓も行われているとか。

恐らく、早晩追い抜かれるでしょうね。


「次。エドラ・ファムディアと、エステル・アルヴェーン」


教官が宣言。

エドラさんは連戦となるけれど。

特に消耗はしていない。


さて……


「エステル様……今日こそは」


「まだ負けませんよ」


あまり自信はないのだけど。

そもそも、私は戦闘より、支援の方が得意なのです。

というか、攻撃は苦手です。


ボウッ


エドラさんを、青白い光が纏う。

闘気の鎧。

ルーンナイトの特徴であるそれを、難なく使用。

やはり……既に、ルーンナイトを名乗って良い実力がある。


タッ


最強の防御力。

風の如き速度。

そして、


ボウッ


稲妻の如き斬撃。



短距離転移で躱し、


「貫け!」


詠唱が完成。

エドラさんの周りに、無数の光の槍が出現。

こちらに向かって飛ぶ。


ルーンナイトは、魔法も頭抜けている。

流石に、賢者である私と、純魔法力は劣るけれど。

それでも、国で有数の魔法師である事に間違いはない。



残り香を残し、実体を転移。

魔法は、誘導の特性が付与されていたけれど……残り香に囚われ、そのまま地面に突き刺さる。


「焼き尽くせ、煉獄の炎」


炎の魔法を行使。

牽制に放ったそれは、エドラさんの結界を焼く。

貫通はしない。


「貫け、裁きの雷」


準備しておいた、詠唱魔法。



炎に抵抗して止まっていたエドラさん。

その肩を貫通する。


「!!」


魔法を使った瞬間の隙。

それを逃さず、負傷を無視して、エドラさんが剣を構えて飛び、


「切り裂け、烈風の鳳」


迎撃に放った風の魔法が、エドラさんを切り裂く。


そして、


ブンッ


振るった杖が、エドラさんを打ち、吹き飛ばす。


そして、本命の、


「迸れ、絶界の雷──」


「こ、降参!」


エドラさんがぱたぱた手を振ります。

ぎりぎりでしたが、学園2位の座は守れたようです。

本来であれば、加圧で動きを封じるのですが。

エドラさんはそれが通じないので厄介です。


サーラさんが、エドラさんの傷を回復しています。


「エドラはまだまだだな。時空弾や重力弾も使っていないし、得意の氷魔法も使っていないのに、防げないか」


サンドラ様が、酷評します。

時空弾や重力弾は流石にこんなところで使えないですし、サンドラ様以外の人には撃っては駄目な代物なので。

あと、私が得意なのは炎であって、氷は滅多に使わないですよ。


「次、エステル・アルヴェーンと──」


「降参します」


「……仕方ないな」


サンドラ様との模擬戦。

開始前にキャンセルです。


この学園が壊れる規模の魔法を使っても、サンドラ様の結界は貫通できません。

つまり、やるだけ無駄です。

これがルーンナイトの極地。

勇者様には敵わないですが、恐らく魔王なら倒せると思います。

サンドラ様は、そんな存在です。


「……入学してから、公式模擬戦を1回もしてないんだが」


「こちらの攻撃は通じないし、移動は見えないし、サンドラ様の攻撃は防げません。どうしようもないですよね」


純粋な魔法の威力だけを比べるのであれば、私にも勝機がありますが。

戦闘となると、勝ち目はゼロです。


ともかくも。

今は、エドラさんの成長と、勇者様の優秀さに慄きましょう。

さて、どれだけの期間、2位でいられるでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る