第41話 モブと朝食

>> ロー


「……ごめん……エステルちゃん……エドラ様……」


虚ろな目になったエドラ様の前に、崩れ落ちる。


「ご主人様……ご主人様が責任を感じる必要はありません……私も、アレを甘く見ていました。が、確かに、言っている事も一理あります。圧倒的な力を持っているとしても、それを対価なしに要求するのは、虫がいい話ですから」


エステルちゃんが、半ば自分に言い聞かせるように、言う。


「これは私の選択。エステル様や、ローさんが気にする事ではないよ」


エドラ様が、申し訳なさそうに言う。


……ん?


「あれ、エドラ様……?」


「何ですか?」


「……意外と普通ですね?」


「意外と失礼ですね?」


あれ。

さっきまで正気を失っていたような。


「……やっぱり大丈夫だったんですね」


エステルちゃんが、半ば安心した様に言う。


「ん。そういうものだからね」


んん?


「私、毒は効かないから」


「……暗殺者、だっけ。毒抵抗が高い、という事か」


「違う。効かない」


ん?


「ご主人様、エドラさんは、ご主人様と同じく、異能ユニークスキル持ちです。毒無効。自身に対して、不利益があると判断した現象を、無かったことにします。毒の海でも泳げますし、酸のブレスを飲むこともできますし。重圧や遅延の魔法も、完全に無視できます」


「何それ、チートじゃないか」


「チート?」


「いや、反則級のスキルだなって。……流石異能ユニークスキル……」


「あの……ご主人様、恐れ戦いておられますが、ご主人様の異能ユニークスキルも、十二分に反則ですからね?」


いや、料理保存できるだけですよ、これ。


「そういう訳だから。私は勇者様の魅了も効いていないし。この身を捧げるのも、力を貸してもらう対価。むしろ、みんなを巻き込まなくて済んだので、嬉しい……この貧相な身体に、そこまでの価値はないとは思うけれど」


いや。

十分可愛いよ?


エステルちゃんの方が可愛いのは、身内贔屓がかなり入っているので。


ともかく……


「朝食にしようか」


せめてものお詫びに。

俺は、最高傑作の料理や、食べに行って感動した料理のお弁当や。

そういったものを、テーブルに並べ始めた。

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