第30話 商人の終焉

>> サーラ


朝から、目まぐるしく時間が過ぎました。

友人や家族を心配させない為、笑顔を顔に貼り付け続け。

もっとも、上手くいった自信はないのですが。


私は、ラスムスの妻となりました。

自らの名を、失いました。


家族を守るため。

友人を守るため。


これからは自分を殺し、ラスムスに気に入られる事、それだけを目的として、生き続けなければなりません。


美味しい料理を食べ。

心地良いお風呂に入り。

芳しい香草の香りを身に纏い。

肌も顕わな薄手の服を身につけ。


そして。

ラスムスが入ってきました。


「おお……流石、サーラちゃん。一段と美しい……ようやく、儂の夢が叶う……君が、この家に来てくれた」


「……はい、末永くよろしくお願いします」


ラスムスが、無遠慮に、腰に手を回し。

耳元で囁く。


「今夜は、記念すべき日だ。安心して良い。全て、儂に任せておけば良い」


部屋が、薄暗くなる。

ふかふかのベッドに押し倒され──

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