第20話 氷女神と遊女

>> エステル


1ヶ月近く授業を休んだけれど。

学習内容に遅れはない。

……というか、ご主人様に色々聞いたお陰で、謎とされている現象が色々と事実が分かっていて、微妙な感じでした。

どう思うか、とふられて、事実を述べたら、驚愕の表情をされました。

凄いのはご主人様ですからね?


実技は……冷静になれたお陰で制御は良くなった反面、臆病さから来る殺意がなくなった為、攻撃力は落ちた気がします。

負けはしないのですが、評価が落ちそうな気もしますね。


どんっ


「か、壁が!」

「修理班を呼べっ」


サンドラ様の攻撃の余波が、また壁を壊しました。


「……悪いな」


分が悪そうに、サンドラ様がぼやいています。

強すぎるんですよね。

かなり抑えていても、ああやって施設が破壊されるのが日常茶飯事です。


あっという間に放課後。

久々の学友との交流は、楽しい一時でした。

が。


「マリンさん」


「ひっ」


張り付いた笑顔で、マリンさんがこちらを向きます。

朝も、軽く挨拶しても、怯えた顔で挨拶してそのまま去ってしまって。

親友の態度とは思えないですね。


「……エステル様、ご機嫌麗しゅう」


「そんなにかしこまらないで下さい。私とマリンさんの仲じゃないですか」


「いつの間に仲が深まりました!?」


失礼過ぎません!?


「……その……ローさんと、ダンジョンに行かれたんですよね。長く休んでおられたという事は、本当に再構築を体験されたのですか?」


「再構築?」


小首を傾げ……ああ、そうでした。

ご主人様との蜜月が印象の全てだったので、そもそもあれがダンジョン再構築だったというのを忘れていました。


「そうでした。再構築の体験をしてきました」


「……無事にお戻りになられて、本当に良かったです」


「ロー様と一緒なのですから、大丈夫に決まっているじゃないですか」


苦笑いをする。

いざとなったら勇者様が来る手筈だったみたいだし。


「様!?」


変なところに食いつかれた。


「それより、マリンさん……本当に、貴方のおっしゃった通りでした。私が間違っていましたね」


「……あ、はい。そうですよ。危険ですよ、ダンジョン再構築なんて──」


「女という存在は、男を満足させる為のモノでしかないんですよね。私はロー様に出会えて、生きる意味を知りました」


「何があったんですか!?ローさん、何をしたんですかああああ!?」


マリンさんが恐慌状態です。

なぜ。


「ロー様は全てを与えてくれました……まだ手は出して貰ってませんが」


「……いや、貴族に手を出さない良識は流石と思いつつ、ではエステル様のその認識の変化は一体……」


「ロー様ですから、敬愛するのは当然では?」


おかしなマリンさんですね。


「……良く分かりませんが……ただ一つ言えるのは、今のエステル様の方が魅力的だという事ですね。今朝は早々に逃げて申し訳ありませんでした……以前のエステル様と雰囲気が違い過ぎて……笑顔が逆に怖かったんです、すみません」


結構、自然な笑顔できていた筈だったのですが。

実は結構怖いのでしょうか、私の笑顔って。


帰宅。

いつもの様にさり気なくご主人様の入浴に侵入。

これもすっかり慣れて、追い出されなくなりました。


ご主人様の作ったご飯を食べ、就寝。

明日の朝も、ご主人様が用意して下さっています。


……


これって、私、ただただお世話されているのでは……?

お風呂で背中を流したりマッサージはしましたが……


学校であったことを色々話し、興味深そうに聞いて下さいましたが。

そもそも、私が聞いて頂いているという状況な気がしますし。

かといって、実家の財力を持ち込んでも、あまりいい顔はされませんし。


……これは、早急に何か対策が必要ですね。

マリンさんに相談してみましょうか……

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