第19話 氷女神と学園
>> エステル
まどろみから覚め、朝。
今日も、ご主人様のベッドで目を覚まします。
徐々に慣れて頂いて、関係を進める作戦。
順調です。
もともと、その手の事に慣れておられるのでしょう。
開き直って、包み込んで下さいます。
あと一歩です。
身だしなみを整え、朝食の準備。
パンにチーズを乗せて、ハムを散りばめて。
野菜を切って。
お湯を沸かし、香草とソーセージを入れ。
ご主人様は時間に余裕がありますが、私はまだ学生の身。
充電期間も終わったので、今日からは登園再開予定。
手早く済ませないと。
「……頑張っているところ悪いが……寝ぼけているな?」
不意に、ご主人様が呆れた声で告げます。
おや?
「朝食なら昨日の夜に仕込んだだろ?それは俺が昼に貰うよ」
そう言って、ご主人様が、何もない空間から、ほかほかの料理を出します。
……ご主人様の
時間がない朝にも便利ですね!
「……すみません、寝ぼけていました」
「仕方がない。今日から学園だろ?」
「夜にお楽しみだったのが響いているようです」
「……すぐ寝入ってたと思ったが」
勿論寝たふりでした。
ご主人様は速攻で寝ていました。
優秀な抱きまくらでいられたという事なので、誇らしいです。
「それはそれです」
席につき、神とご主人様への感謝を捧げ、食事を頂きます。
……美味しい。
同じ手順の筈なのに、別にスキルとかない筈なのに、全然違う。
これに比べると、私の料理は、材料を混ぜ合わせただけ。
何故……
どことなく、気配を感じます。
彼は、勇者様。
実は、ご主人様には内緒で、面識が有ります。
魅了スキル持ちだそうなので、配慮して、屋外で距離を取って下さった状態で話しました。
ちなみに、視覚に作用する魅了スキルはないそうです。
整った容姿はしておられましたが、ご主人様の方がほっとする感じで好きです。
多分、私がでかけたら出てきて、朝ごはんを食べるのだと思います。
「美味しかったです、ありがとうございました」
「美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるよ」
料理は別に好きではないとおっしゃりますが。
結構楽しそうに料理される気がします。
手のこんだものも作られますし。
食べているのを見る時は、にこにこされています。
幸せ。
「それでは、でかけてきますね」
ゆるゆるになったと自覚した顔で、ご主人様に挨拶しました。
--
ここから、王立アカデミーは、のんびり歩けば徒歩15分といったところです。
結構立地良いのです。
まあ、関係ないですけどね。
ご主人様に手を振ると、
「此方から彼方へ、開け、天翔ける扉」
ワープポータルを出し、くぐります。
「なっ」
あれ、初めて見せましたか?
ご主人様が驚きの表情をしておられます。
まあ、ご主人様と歩く時間を減らす愚行をする訳がなく。
当然、今日まで使用機会はなかった気もします。
「行ってまいります」
改めて会釈すると、ワープポータルをくぐり、王立アカデミーへと到着しました。
……ちなみに、学園敷地内には対策がしてあるので、直接教室まで移動する事はできません。
面倒ですね。
「ご苦労様です」
無難な笑顔を貼り付け。
衛兵の方に挨拶します。
あれ、衛兵の方が驚愕の表情です。
何故でしょうか。
それは、教室に入るまで、いえ、入ってからも続きます。
親しい友人まできょとんとした顔をされ。
何故ですか。
実は何か服装がおかしいのでしょうか?
「エステル……その……どうしたんだ?」
親友のサンドラ様です。
困惑した顔です。
「珍しい表情ですね。サンドラ様が困惑した顔なんて、久しぶりに見ましたよ」
「こちらの台詞だ!何だか、憑物が落ちたような表情……十数年ぶりに見るぞ?」
なるほど、ようやく理解しました。
今までは自分を護る為、全力で殺気を纏っていましたが。
ご主人様と出会えた事で、その必要性もなくなり、無駄な事を省きました。
結果、普段と少し印象が変わったという事ですね!
いや、こちらが素の私なので、複雑な気持ちです。
早く慣れて下さい。
あの事件以来、ですかね。
「私はずっと私ですよ、サンドラ様」
偽りではない笑顔を浮かべる。
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