第18話 モブとマイン

「ロー様と一緒にいられないなら、この人生に1片の意味もありません。ですから、終わらせようとしているのです」


……え、嘘だよな?


……目がマジだ?


「だいたい、きみの父親も許さないだろう?」


ダンジョン再構築はなんとか嘘をついてごまかしたらしいが。

流石に外に出てまで男のもとに入り浸っていたら、家族が黙っていないだろう。

本来は、上流階級との縁談とかが用意されているはず。

……というか、婚約者は既にいるのでは?


「……では、父上に会って下さいますか?」


ちょ。

俺が殺される。


……


が、今の状況よりはましだろう。

もともと、街を出る事も考えていたくらいだ。

いざとなったら逃げよう。

……あまり自信はないが。

ゴルファが助けてくれる……はず。


--


>> ロー


王国宰相。

文官の筈だが、かなりの力量だ。

……正直、俺では敵わない。

単純な、剣で。

おそらく、更に魔法まで使う。


その偉丈夫が。


頭を地面にすりつけている。


「あ、あの……」


「どうか、どうか娘の頼みを聞いて下さい!」


「いえ、だからですね……」


「お願いします!」

「どうか!」


母親と執事も、涙目で訴える。

どういう事だ……


「ロー様、どうですか?だてに、生き続けるのに支障が出るレベルの臆病な性格をしてないですよ。事情を知る者にとっては、常識です」


ふわり


エステルちゃんが胸をはる。


「……わ、分かった。一緒に住めば良いんだな」


「そういう事です」


自慢げだ。


「すみません……お嬢様は、あの事件以来、本当に臆病で……自分を護る為に、氷で身を守っておられたのですが……まさか、すっかり溶けて帰られるとは」


人生に必要なものだったんだね!


「事情を聞いた時は焦ったが……だが、正直、感謝している。今は娘は、笑顔でいてくれてる……本当に、久しぶりだ。最後に笑ったのはいつだったか……心を護る為とはいえ、心を凍らせているのは、見ていて辛かった」


「そ、そうですか……」


良い親父さんじゃないか。

せめて家族には心を許してやれよ……


「すぐに婚姻は望みません。ただ、お側にいさせて下さい」


「……一緒に住む、それだけだからな」


ゴルファに何て言おう……


--


>> ロー


「戻ったか」


部屋の隅に、影。

ゴルファだ。


「ゴルファ……その、言いにくいんだが」


さて、どう切り出したものか。

ゴルファの運命の女性との距離が近づきつつある。


「地上に戻ったあたりから、ちょくちょく見ていた」


見ていたか。


「……あれはないな。あそこまで依存され……しかも自分の命を盾にして……顔とスタイルはSSRだが、性格はかなりハズレだな」


……まあ、ひくよな。


「最初魅力的に見えて、実際に付き合ったら、という類の女性がいる。正直、自分で踏み抜かなくて良かったと思っているよ。だからこそ分からない。預言ザ・ワーズはどうなるのか……」


必ず実現する訳だよな。

どうなるのか……


ちなみに、ゴルファはどんな女性が好きなんだ?

てっきり、自分にべた惚れで従順な女性が好きかと思ったが。


「そうだなあ。自分をしっかり持っていて、自分の事も、周りの事も大切にできる……独立した女の方が好みかな。俺にそこまで依存せず、俺は束縛されずに自由にできて……でも、甘える時は甘えてくる感じの」


えらく具体的だね。


「あとは公の地位を持ってる女性が良いな。俺はそいつに隠れて、スローライフをおくるんだ。適当に助言して、驚かれて、その家が超発展して」


もともと隠れ蓑の幼馴染が欲しいと言ってたからな。

俺の立場で可愛い女性が欲しかったと。


「お前はお前で、親友ポジションだから重要なんだけどな。やはり、異性の超絶美人幼馴染は必須だった……くそ。それさえあれば、今頃あの村を、周辺諸国に恐れられる超未来都市にしてたのに……」


村長の娘とか普通に美人だと思ったけどなあ。

エステルちゃんと比べたらその……あれだけど。


「というわけで、お前もエステルちゃんの事は、遠慮しなくても構わないぞ。俺も親友の女に手を出したくないし……あの娘は正直、避けたい」


許可出されても逆に困るんだよなあ。

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