第3話

そうこうしているうちに大学に着いた。夏休みだと言うのに暇を持て余した学生がうようよいる。顔馴染みに軽く挨拶を交わしつつサークル棟へ歩を進めるのであった。

 

「おはよ!今日も暑いね」

 その声で振り返ると、1人の女性が立っていた。

 「おはよー恵那!」

 颯太は相変わらず大きな声でその声に返事をしていた。俺は思わず面食らって軽く手を上げながら、吐息なのか返事なのかわからない音を出すだけだった。

 

「今日って何するんだろうね?」

 恵那はそう続ける。

「部長いないし、何もしないかもね。」

「それはあり得るな。」

ここでようやく調子を取り戻し、会話に参加する。元気な二人を相手にしてると、たまに着いていけなくなることがある。

「せっかく来たのにもったいない!」

恵那は口を尖らせながら、軽く愚痴を言う。

「せっかく来たんだし一緒に昼でも食おうよ!」

「それ賛成めっちゃあり!潮はどうする?」

そんな提案聞くまでもない行くに決まってる。

「まあ時間は空いてるし付き合えるぞ。」

「ほんと素直じゃない潮って。」

「それがこいつの良いとこだから」


そんな他愛の話をしていると、あっという間サークル棟に着いたのであった。

 

 部室のある三階まで上がるとあらかた人が集まっていて、がやがやとしていた。そこまで広いスペースがあるわけではないので、始まるまで廊下で待っていることにした。外から蝉の声が聞こえてきて多少不快ではあるが、今だけの辛抱だなと思った。

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