第11話 オズマ視点2

【前書き】

今回のお話は前回のオズマ視点の続きになります。

ごちゃごちゃになってしまい申し訳ございません。


ーーーーーーーーーー



「援助が出来なくなっただって!? なぜいきなりそんなことになってしまう!?」


 金の援助があるからこそミーナと結婚したのだ。

 もしも援助がないのならライアンと結婚していた方がマシだったんだぞ!?

 とはミーナの前ではさすがに言えないが。


「お父様の会社、何か不正があったみたいで裁判中なんだって……」

「裁判!? 不正!? ミーナはそのことを知らなかったのか?」

「全く。お父様たちが私の結婚を急かすから何かおかしいとは思ってはいたんだけど」


 なんということだ……。

 要するに、裁判で負けて家が崩壊しかねない状況で、ミーナが不幸にならないようにさっさと誰かの元へ嫁いで逃げろという作戦だったという可能性が高い。

 しかも、よりにもよって金の援助が必要な俺の元へくるなんて……。


「で、これからどうするというのだ?」

「もちろんオズマと一緒にいるわよ。お父様たちが破産したとしても今だったら私には危害はこないから。だから予定は変わるけど、オズマがしっかり稼いで私を養ってね」

「はぁ!? 何を言っているのだ!?」


 相変わらずの図々しさとわがままさだ。

 この性格は俺もライアンも二人で何度も注意してきたのだが、一向に治ってないではないか。

 くそう……。援助の件があるからそれを考慮すれば結婚した方が良いと思ったのに……。

 

「はっきり言おう。俺はこの先も貴族としての年俸を頼りに生きていくつもりだ。限界まで節約すれば最低限の暮らしなら可能だからな」

「そんな……じゃあ、ランチは? ディナーは? フレンチコースは? 私のブランドバッグやアクセサリーは?」

「そんなもの、この現状ではあるわけがないだろう」


 よし、珍しくまともなことを言ってやった。

 これでミーナが離婚したいと言ってくれば慰謝料も請求できるし完璧なんだが。

 ミーナは、しばらく無言のまま無表情になっていた。

 何か考えているようだが……。


「こうなったら……」

「何か策があるのか!?」

「ライアンも嫁にしなさい」

「はぁ!?」


 何を言い出すかと思えば……。


 一部の貴族には一夫多妻も例外的に認められてはいる。

 だが、所詮我が家は一番身分の低い准男爵家。

 申請が達わけがないだろう。


「頑張って最低ラインの男爵までのしあがればいいのよ。何か国に功績を残せればあるいはもっと上も……」

「いや、無理だろう。俺はそもそも楽をして生きたい人間なのだ。民衆どもの税で生きていければそれで良い」

「それでも嫌なら稼いで」


 本末転倒だ。

 俺は働きたくないと言っているのに稼げと命じてくる。

 この件でしばらくミーナとの口論が続き喧嘩に発展してしまった。


「俺はこの際、最低限の生活でも良い」

「私の生活はそんなんじゃダメなの!!」


──ライアンよ、俺は君との婚約解消したのが間違いだったのかも知れない。こんな金にもならないわがまま女とずっと一緒だなんて地獄でしかないのだ。


 まてよ……?

 まだ裁判中と言ったよな。

 王都でニュースにもなっていないし、判決が出ていないのだろう。


「なんだ! こんな簡単なことになぜ気がつかなかったんだ俺は……」

「何よ!?」

「ミーナよ。もしかしたらお前の家も救えるかもしれんぞ?」

「どうやって!?」


 俺はたまにだが、窮地に立たされると天才的な発想が芽生えることがある。

 ライアンとの婚約解消のときだって、最初は婚約破棄にするつもりだった。

 だが、真剣に考えた結果、婚約破棄にした場合俺の方から慰謝料を払わなければいけないと判断ができたのだ。

 これほど素晴らしい発想ができるくらいなのだから、今回だって完璧な作戦に間違いはない。


「ミーナよ、大至急ワインド家の金と金銀といった金になりそうな資産を我が家に避難させるのだ」

「まさかその金で豪遊するなんてバカな発想しているの?」


「違う。あくまでも預かるだけだ。裁判で下手をすれば家はお取り潰しになって財産も全て没収されるかもしれないのだろ?」

「そうだけど……」


「だから、今のうちに隠すんだ。まさか嫁いだ先の家に預けているなんてことを考える発想も凡人には浮かばんだろう。それに、隠しておいて徐々にワインド家に返していけばその後の生活も安泰だろう? それに……」

「それに?」


 その財産をちょっとだけ借りて博打で一儲けすれば我がトリコロエル家の財政も安泰になるだろうな。

 博打は継続するのは危険だが、短期間で勝負をすれば儲かると聞いたことがある。

 最初はリピーターを獲得させるために勝たせるのだとか。

 これはミーナには黙っておこう……。


「ああ、いや。それによって少しは謝礼ももらえればいいかなと。これだって稼ぐといえば稼ぐ行為になるだろう」

「確かに……。私の家にそのまま放置しているよりは確実よね」


「だろう? このことはワインド家のご両親には黙って実行した方がいい。裁判中に余計な口を滑らせればマズいからな」

「オズマもお父様に負けないくらいの悪知恵が働くのね……」


 ミーナとようやく息が合った。

 もしかしたらこれがキッカケでミーナとの結婚生活も幸せなものになるかもしれないと期待が膨らむ。


──ライアンよ、先ほど思ったことは帳消しだ。ミーナとは息が合う。おかげで自分の手でひと財産得られるかもしれないのだぞ……。


 ライアンに次会うことがあれば大いに自慢できるかもしれない。

 ニヤニヤが止まらなかった。

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