第3話 フランシスの母

 私は母の記憶がほとんどない。

 

 母は私が2歳になってすぐ病気で亡くなった。元々病弱で自室からでてくることもあまりなく、私を抱いて可愛がることも少なかったという。母が使っていた部屋に肖像画があるが私と似た緑の瞳を見ても母に会いたいと心が動くことはなかった。

 それに今は優しい母がいる。父の再婚相手で血の繋がりはないがこの肖像画の母よりずっと私を愛してくれていると思える。兄と弟までできて家の中は一気に明るくなった。


 お母様のご実家は貴族だそうだ。

 ご実家の事情により商家に嫁いだそうだが20以上も年の離れた旦那様は突然のご病気であっけなく亡くなり、商売はその旦那様の弟君が継いでいるそうである。お母様は商家を引き継ぐよりお父様との再婚を選択したのだ。


 息子に商家を継がせる道を捨てたと非難する人もいるようだけど、私の家も貴族である。お兄様は侯爵家の跡取りとなったのだ。商家と比較にならない財産と地位がある。


 カーライル家の領地は広大で海にも面しており他の領地との貿易も盛んである。この国有数の財閥なのである。おかげで私には素敵な家族ができた。


 お二人は再婚同士なため大きな結婚式はせず、内輪だけのささやかな式を挙げた。父もとても幸せそうだ。

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