第4話 家族の肖像画

 今日は家族の肖像画を依頼した画家が来る日だ。ウイリアムの10歳の誕生日記念にと父が考えたことだ。私たちが家族になってからもう7年も経ったのだ。


  芸術家というと気難しい顔をした、眼鏡をかけ鼻の下に白い髭をたくわえ…私の想像は見事に覆された。

 確かに眼鏡はかけていた。しかし快活そうでエネルギーに満ち溢れたまだ30前だろうかと見える青年だった。

 彼は私たち家族の肖像画を描けることがとても光栄で喜ばしいことだと溌剌とした声で語った。そしてとても美しい家族だと。


 家族4人で一緒にいるといつも本当の家族に思われる。お父様と兄さまは同じ金色の髪で瞳は明るいブルーグレー。弟とお母様は亜麻色の髪と若草色の瞳だ。

 冗談が好きで茶目っ気のある性格はお父様と弟が似ている。お母様と兄さまは落ち着いていて物腰が柔らかい。


 私たち兄弟は貴族が通う学園から帰ってくると20分ほど肖像画作成のために家族4人でポーズをとった。

 ウィリアムは5分もするともぞもぞと体を動かし始めたが兄さまに何か耳打ちされるとしぶしぶまた元のポーズに戻った。


 ポーズの時間が終わるとお母様はお茶の時間にしてくれる。もう子供3人ともミルクではなくお茶を飲みながらお菓子を頂けるようになった。


 お母様は私の好きなスフレのチーズケーキを用意してくれることが多い。初めは私に気を使ってくれているのだろうと思っていたがお母様自身もこのケーキが好きになられたようだ。


 お母様とは食べ物の好みがとても良く似ている。食べ物だけでなくドレスや身の回りの小物の趣味もよく合った。


 私たちはよく一緒に買い物に出掛けお互いのドレスを選び合ったりお茶会に使う新しい食器を注文したり楽しい時間を過ごした。今ではあの肖像画の人物ではなくこの人が本当の母だと感じている自分がいる。


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