第17話


 や、やべえ⋯⋯どうしよう。


『———ちょ、ちょっと待ったー!!』


 大きく啖呵を切ったはいいものの頭は真っ白でどうしたらいいか分からなかった。

 声をかけた先にいるのは白瀬と、白瀬の腕を掴んでいるガラの悪い男。


 ナンパだとは一目見てわかったが、何故後先考えずに声を出してしまったのだろうか。

 絶対邪魔したからボコってくるじゃん!見た目怖いし!


「ぜ、善一くん⋯⋯?」


「⋯⋯誰? 知り合い?」


「えと⋯⋯彼は私の———」


 白瀬は俺の顔を伺って言葉に詰まる。

 ⋯⋯まあ、そりゃあ数週間無視られたんだからなんて答えればいいか詰まるのも当然だ。


 だから、白瀬の代わりに俺が答えることにした。


「———白瀬は俺のいじめられっ子だ。だから、白瀬をいじめていいのは俺だけだ。その手を離してくれ」


 ⋯⋯と、俺は声と足をガクガクと震わせながら言ったのだった。


 よ、よし! 言ってやったぞ! 考え直せば意味わからんが言ってやったぞ!

 震えてるの多分バレてないよな?


「あはは! なにそれ!」


 ⋯⋯めっちゃ笑われた。

 隣にいる白瀬は見てられないのか顔を真っ赤にして片手で顔を覆っている。


 いや、そりゃ笑うよな。だって意味わかんないもん。

 俺何言ってんだよ⋯⋯。


「別に俺は白瀬?ちゃんをいじめるんじゃなくて、遊びに連れて行くだけだよ。お互い合意の上だよね?」


「勘違いしないでくださいね善一くん。私は了承した覚えはないし、今もこうして強引に手を掴まれています」


「あ、ああ⋯⋯」


 危ねえ⋯⋯あやうくあいつの言葉を信じるところだった⋯⋯。

 呆れたような目でこちら見る白瀬。

 一瞬信じたのバレたな⋯⋯。


 だが、白瀬の言葉を聞いてもう迷いはない。


「帰ろう白瀬」


 俺はそう言って白瀬のもう片方の手を掴んだ。

 その瞬間、白瀬は驚いたように目を見開かせた。


 いや、今まで一緒に帰るのを拒んでおいて都合良すぎだろ!とはなると思うがそこはどうか目を瞑ってほしい。


「——はいっ! 帰りましょう!」


 白瀬驚いた顔は一瞬で消え、途端に目を輝かせて弾ませた声を上げた。

 問題は白瀬の腕をまだ掴んでる男なんだが⋯⋯。


「待った待った。白瀬ちゃんは俺と———イタァ!?」


「おい、何やってんだよ白瀬⋯⋯」


「⋯⋯? 離してくれそうにないので仕方なく⋯⋯」


 突如声を上げた男の手を見るとつねられて赤くなった跡が。

 男はギリッと歯をならしてこちらを睨んだ。


「と、とりあえず逃げるぞ!」


 俺はそのまま白瀬の手を引いて走り出した。

 白瀬もなんとか⋯⋯ではなく、かなり余裕そうについてきていた。


「逃げるんですか?」


「当たり前だ! 俺は人を殴らない!」


 俺は不良を名乗っているが⋯⋯喧嘩をしたことはない。

 人様のこと殴っちゃダメって母ちゃん言ってたし⋯⋯。


「よくそれで不良名乗ってますね⋯⋯」


 またしても呆れたようにこちらを見上げるが⋯⋯その後一瞬、白瀬が微笑んだように見えた。




————————————————————————



 次回でこの場面終わりなのでもう少々お付き合いください。

 早く書きたい話があるので俺も頑張ります。

 久しぶりだからかなり迷走してます。

 

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ぼっちの美少女を何年もいじめ続けてたら好かれた 〜いつの間にか立場も逆転されてた件〜 ムイシキ @mukushiki

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