第9話
歩き慣れた帰り道。
いつも通り俺の隣を歩く白瀬に視線をやると、不思議そうに首を傾げた。
かわい⋯⋯じゃなくていじめたくなるな。
「⋯⋯そういえば、白瀬って好きな人とかいるのか?」
先程、優斗と話していたことがふと頭によぎりそんなことを聞いてみる。
白瀬がモテているのは承知だが、白瀬自身が誰かを好きというのは聞いたことがなかった。
「はい、いますが」
「えっ、いんの?」
「逆に知らなかったんですか?」
「知らないな⋯⋯俺に言ったことあるっけ?」
「ありませんが⋯⋯ほんとにわかんないんですか?」
「わ、わからん⋯⋯」
えっ、白瀬好きな人いたの?
なんやかんや白瀬と長いこと一緒にいるがそんな話は全く知らない。
いつの間にそんな奴が⋯⋯。
「な、なんで俺に相談しなかったんだよ?」
「よりにもよって善一くんにするわけないじゃないですか⋯⋯」
「うっ⋯⋯そ、そうだよな⋯⋯」
そりゃ自分をいじめてる奴に相談するバカがいるわけないか⋯⋯。
ていうか、白瀬に好きな人がいるんだったら俺って邪魔なのでは?
現状、俺と白瀬が付き合ってるとかいう意味わからん噂が流れてるわけだし。
白瀬のためにも、俺はもう白瀬から離れるべきなのか⋯⋯?
「⋯⋯善一くん? どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもない」
「そうですか⋯⋯?」
それからは、特に会話もなくそのまま帰路を歩いた。
なぜかわからないが、白瀬に好きな人がいるのを考えたら考えただけ腹痛に悩まさらていたからだ。
気付いたらもう白瀬の家の前だった。
「今日もありがとうございました。では、また明日」
「ああ、また明⋯⋯いや、待ってくれ白瀬」
「⋯⋯? どうかしましたか?」
玄関へ入ろうとした白瀬を呼び止めると、キョトンとした顔でこちらを見つめた。
「その⋯⋯明日は一人で行ってくれないか? 俺は日直だから早めに行かないと⋯⋯ 」
「そうだったんですね。だったら私も早起きしますよ」
「いやいや大丈夫! 一人で行くから! 白瀬はゆっくり寝てていいぞ!」
「⋯⋯? まあ善一くんがそこまで言うなら⋯⋯」
そうしてなんとか白瀬を押しとどめ、俺は別に日直もないのに1人で登校することになってしまった。
こ、これで合ってるはずだ。
何も間違ってないはず⋯⋯。
白瀬に好きな人がいるなら邪魔しないようにしないと⋯⋯。
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