第2話

それから毎日、白瀬に自分の時間を作らせないべく俺は白瀬の勉強を教えてもらうことを強要した。

 ⋯⋯なんか嬉しそうにしてるのは多分気のせいだろう。

 普通勉強を教えるなんて面倒くさいことこの上ないんだから。


「あの⋯⋯関根くん。私は病気って周りから言われてて⋯⋯本当に病気かもしれません。私といたらもしかしたら移しちゃうかも」


 ふと勉強中に白瀬がボソッと呟いた。


「えーっと⋯⋯移ったらなんかやばいのか?」


 この時の俺、相当頭が弱い。


「この髪の毛も病気って言われてて⋯⋯私もあんまり好きじゃないんです。もし移しちゃったら関根くんにも迷惑を⋯⋯」


 バチッ!と俺の頭に電流が走った。

 これはチャンスだった。

 白瀬は自分の髪の毛があまり好きではない。ていうか多分嫌い。

 だから、ここで俺がすることは1つ。


「俺はお前のその白い髪、めっっっっちゃ好きだぞ!」


「へっ!?」


 効果覿面のようだ。白瀬は顔を真っ赤にするほど髪を褒められるのが嫌らしい。


「なんつーか雪みたいでめっちゃ綺麗だし、すげーサラサラじゃん!」


 とはいえこれは本心だ。

 周りは病気とか不気味とか言ってたが、俺にはわからなかった。

 根っからの悪だから周りと慣れ親しめないのだろう。


「あ、あの⋯⋯そこまでで大丈夫です⋯⋯」


 白瀬も顔を真っ赤にするほど怒りが込み上げているようだ。

 自分の髪が嫌いな白瀬の髪をベタ褒めすれば白瀬は嫌がるはず。俺の考えは間違っていなかった。

 俺だってもしへその下にある黒子を褒められたらムカつくし。


 それに、俺の悪逆非道で残虐的な行為はまだ終わらない。


「それに、俺は病気なんて移されても問題ない! だからずっと一緒にいてやるよ!」


「ずっと⋯⋯ですか?」


「そうそう、ずっとだ! 約束だ! ガッハッハッ!」


 悪役にずっと付き纏われることを考えただけで寒気がする。

 多分ロード仮面も鬱病になるんじゃないんだろうか。


「うぐっ⋯⋯ありがとう⋯⋯ございます⋯⋯!」


「ガッハッハッ! そんなに嫌⋯⋯か⋯⋯って」


 何故か感謝をされた気がするが、多分気のせいだろう。

 だって白瀬は目から涙をボロボロと溢しているんだから。


「す、すまん⋯⋯言い過ぎた⋯⋯ほら、これ使えよ」


 別に白瀬のためにハンカチを貸してやった訳じゃない。

 ここで白瀬が涙の流しすぎで脱水症状を起こして死んでしまったらつまらないだけであって、白瀬のためじゃない。

 もっと白瀬に長く苦しんでもらう。そういうことだ。


「ありがとう⋯⋯ございます⋯⋯!」


「えーっと⋯⋯ガッハッハッ!」


 なんかまた感謝された気がする。

 だけど不良である俺に感謝なんてするはずなんてない。

 白瀬は泣いているから俺がやっていることは間違いじゃないはず。

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