ぼっちの美少女を何年もいじめ続けてたら好かれた 〜いつの間にか立場も逆転されてた件〜
ムイシキ
第1話
「んじゃ、行ってくるわ」
「待ちなさい龍斗! 帰りは遅くなったらだめよ!」
「わかってるって! 心配しすぎだババア!」
そう罵声を上げながら俺の兄、関根龍斗(せきねりゅうと)は家を出ていった。
高校生になって夜遊びが増えた兄は朝帰りなんかも多くなり、バイクもぶいぶい言わしている。
「まったく⋯⋯善一(ぜんいち)はあんな風になっちゃだめよ?」
「うん! 分かってる!」
なんてことを小2の俺は母親に言ったが、内心「兄ちゃんかっけー!」と思っていた。
密かに兄ちゃんや、特撮ヒーローものに出てくる悪役に憧れている俺は不良関連のことを勉強した。
だけど煙草は流石に吸うのは怖いし、酒よりコーラの方が美味そうだからそっち方面には手を出さないで行こう。
そういう方針で決めた。
だから不良たちがやっているいじめってやつをやろうと思う。
勉強したところ、弱い者に買い物をさせたり金を集ったり悪口を言ったり⋯⋯とんでもない悪だ。
俺は明日の学校を楽しみにして寝た。
☆
まずは標的探し。これはもう昨日のうちに決めていた。
休み時間なのに一人で本を読んで寂しそうにしている女子、白瀬姫乃(しらせひめの。)
腰まで伸びた長い銀髪が一際目立ち、周りからは病気とか言われてた。
こんな恰好の的はない。そう意気込んだ俺はすぐに白瀬の席へと向かう。
「おい白瀬!」
「ひっ! は、はい⋯⋯! なんでしょう⋯⋯」
机を勢いよく叩きつけたせいでビビらせてしまった。
やりすぎただろうか。
「えーっと⋯⋯お前! 俺の宿題やれよ! まだ終わってねーからさ!」
「しゅ、宿題⋯⋯ですか? なんで私が⋯⋯」
「だ、だよな、普通宿題は自分でやるものだよな。母ちゃんも言ってたし⋯⋯」
「えっと⋯⋯?」
「だ、だったら! 俺に勉強教えろよ! 宿題難しくてよくわかんねーからさ!」
我ながらとんでもない奴だと思った。
俺のために時間を割くことはもちろん、面倒くさい勉強を教えなければならないんだから。
なんという巨悪。
白瀬を指差しながら思わずガッハッハッと笑ってしまう。
「勉強⋯⋯私でいいんですか?」
「俺見ちゃったんだよなー! お前がこの前の算数のテストで100点取ったの!」
そしてわざとらしく大きな声でクラスメイトに聞こえるよう点数を公表してやった。
本来点数なんて周りに知られたくないだろう。俺の10点なんて周りに絶対知られたくないし。
この怒涛の不良っぷりに俺は心の中でニヤけどころか爆笑した。
多分俺には不良の素質があったんだと思う。
「えっと⋯⋯その⋯⋯本当に私でいいなら、教えますよ」
「ガッハッハッ! いいぜ! 早く教えろよ!」
そして白瀬の読書を中断させて俺に集中させる。
完璧すぎた。
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