そこは重要機密の集合体。

 グリーンに輝くその施設は広大であるが、決して牧場の様な場所ではなく、特殊金属に囲まれ無機物感が辺りを埋め尽くしている。有機物である生物が生み出されているとは到底思えない場所だった。

 生物の起源である場所だが、誰一人として、この場所に来るものなど居ない。

 怪しく緑に輝くブレイブセンターははるか上空まで伸びている、一つの大きな金属の箱。窓もなければ通気口のようなものも見当たらない。

 扉もないその施設から出荷の瞬間、金属の箱から小さめの箱が排出される。それは予めある入り口が開いて出てくるわけではなく、まさに箱が生み出されるように出てくるのだ。

 窓も扉も何もない、故に、ブレイブセンター内に入ることは不可能。

 制御はすべて機械によってなされ、制御が暴走しないように見守るのも機械。ブレイブセンター内に居る生物は出荷される生物のみ。

 唯一、不測の事態に対応するために、出荷予定の生物以外と機械ではない者が居るには居るが、それはブレイブセンター用に培養された必要な知識しか持たない人形のような生物のみであり、それらが外にでることは一生ない。

 感情を持たず、反抗することもなくただ作業をするだけの存在の彼らと世界を眺め管理している機械達によって、世界の生物の均衡は保たれていた。

 彼女はこの場所にやってきて、巨大な金属の箱を眺めつつ、外からは見ることのできない中で働く彼らを羨ましく思う。

 命令されるまま感情もなく、ただ、動く彼ら。彼女にとってそれがどれほど羨ましいことだったか。

「彼らには存在理由がある。私には其れがない。なんて惨めなんだ。私を生み出すのであれば感情などいらなかった。自分で考える頭などいらなかった。私は人である必要があったのだろうか?」

 何十兆という細胞を持ち、何百種と言う細胞組織を駆使して、作り上げる必要があったのだろうかと、彼女は毎夜この場所で疑問を口にした。

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