静かなる狂信者
「お話は聞かせていただきました。米津様は女神様と夢で直接お話なされたのだとか。女神様の一信徒として非常に羨ましく思いますが、その内容はこの世界に異界神の魔の手が迫っているとは…………このクラリッサ、例えこの身が砕けようとも阻止する所存です」
教務委員クラリッサは、瞳がほとんど見えない伏目のまま静かに話を聞いていたが、差し迫る危機が女神リアを完全に滅ぼさんとするものであることに憤りを覚えているようで、温和ながらも声にそれなりの迫力があった。
「そなたは……リア様に会ったことはないのか? てっきり、この世界に来る者はみな面識があるものだと思っておったが」
「大半は面識はないと思われますし、そもそもこの世界で生を受けた人間は実在すら疑う者もいるようです。ですが、私は子の世界に来る際に一度だけ女神さまにお会いしたことがあり、その人々を想う深い志に感服いたしました。それ以降お会いできないのは、私の未熟さによるもの…………しかし、リア様が私たちのことを見守ってくださるのは、疑いようのないことです」
クラリッサの言う通り、実はこの世界で実際にリアの声を聴いたりその姿を見たりする人はごく少数派であり、この世界で生まれた人々はもとより、異世界から渡ってきた人々でも直接の面識がない者が多い。
そのせいでリアの信仰がなかなか伸びないのが事実であり、おまけにリアは良くも悪くも人間の自由を何よりも尊重するので、キリスト教やイスラム教みたいな厳しい戒律が存在しないせいで、何を指針に信仰をすればいいかがかえってわかりにくいという面もある。
それゆえクラリッサは「教育」という面から女神リアの信仰を少しでも人々に広めようと日々懸命に努力しているのであった。
一歩間違えれば宗教による洗脳になりかねないが、彼女のやり方は(今のところ)穏便で真っ当なので、ほかの委員からは好意的に見られている。
「そうか……道は長いじゃろうが、それが一番確実な教育じゃ。いずれは努力が報われる日が来るじゃろう」
「はい、私もそう信じております。そして、その努力を無駄にしないためにも、そしてリア様の理想の世界のためにも、なんとしてでも此度の暴挙は止めねばなりません」
やや女神リアを盲信している気はあるが、クラリッサはかなり真面目に、そして長期的な目線で物事に取り組む人物だとわかった。
ところが―――――
「でもさ、今回の件はどっかの女神様の逆恨みだとしても、節操なくあっちこっちの世界から人を連れてくるのもどうかなってあたしも思うんだけど」
この何気ないあかぎの言葉を聞いた瞬間……………クラリッサの様子が一変!
伏せていた瞳がいきなりカッと見開かれ、急激に殺気を噴出した!
「貴様!! リア様を侮辱する気かっっっ!!!!」
「えぇっ!? そんなことはないですよ!?」
「死ねっ!! 死んでリア様にお詫びするのだ!!」
「ちょっ、まっ!? おじいちゃん助けて!?」
「何やっとるんじゃ二人とも…………これ、落ち着かんか、どうどう」
今まで温厚だった聖女の姿はどこへやら、突如どこからか棘付きのモルゲンステルンを取り出して、あかぎをボコボコにしようと襲い掛かっていたのであった。
玄公斎が止めには入ったおかげで、クラリッサの暴走は何とか止まった。
「全く、とんでもない子だ。次にリア様を侮辱したら、きちんと「教育」してあげますわ」
「ひぃぃ……」
「とんでもないのはどっちだよ」
あかぎは恐怖で子犬のようにアンチマギアの後ろに隠れてしまい、流石のアンチマギアもこの隠れ二重人格者に唖然としてしまう。
「なるほど、癖があるというのはこのことか。ならば早めにそう言ってくれたらありがたかったのじゃがな」
「すまん爺さん、タイミングを見誤った」
とりあえず、クラリッサの前で女神リアのことを悪く言うのは核地雷だということを胸に刻み、今後のことについてを相談することにした。
「コホン、失礼しました。話を元に戻しますが、リア様と同等かそれ以上の力を持つ女神が侵攻してくるとなれば、生半可な力では相手することも困難でしょう。しかし、私には一つほど対抗手段の当てがあります。最も、確実とは言い切れませんが」
「対抗手段か……この際、使える物はすべて使いたい。命以外でな」
「では、その対抗手段ですが、米津様は首都セントラルの地下に、年代不明の遺跡が広がっていることはご存じでしょうか?」
「いや、わしは初耳じゃ」
「本来であれば行政府の中でも危険性を考慮して極秘扱いなのですが、街の地下道のさらに奥深くに古代遺跡があることがわかりました。そして、様々な情報を当たっていくうちに、どうもその古代遺跡はかつて竜王が統治していた「竜都」の物ではないかと推測されています」
話によれば、首都セントラル地下に広がる地下遺跡は、かつての巨大建築物の遺構と考えられており、それが正しければ遺跡のどこかに「神竜の武器」が眠っている可能性が高いとのことだった。
「かつて竜王を滅した際に用いられた神器の一つ…………神の力に対抗できるのは、別の力を持つ神だけだと私は考えています。探索が空振りに終わる可能性はありますが、試す価値はあるかと思われます」
「なるほど、よいことを聞いた。ワシはおそらくその神器というものは使えぬだろうが、これだけの英傑がそろっていれば、誰かしらが有効に使えるはずじゃ。ただ、今は休ませたい人員も多い故、そう大勢は探索に向けられないじゃろうな」
「はい、なので今回は私が探索に同行させていただきます。少しでもお力になれれば幸いですわ」
「はいはい! おじいちゃん、あたし行きたい!」
「お宝探検といえば、このアンチマギア様の出番だよな! テンション上がるぜ!」
未踏破地帯の探索と聞いて、にわかに色めきだすあかぎとアンチマギア。
ところが、玄公斎は――――
「…………いや、おぬしら二人は連れてゆけぬ」
「ええーーっ!? なんでー!?」
「ずるいぞ! お宝を独り占めする気か!?」
「そうではない。おぬしら二人はしばらく修行を行ってもらう。でないと、この先の戦いについてこれぬ可能性がある」
「そんなー」
まだ成長途上である二人は修行を命じられた。
確かに、自分たちはまだまだ強くなる必要があるとはわかっている二人だが、それでも探索についていけないのは不服だった。
「そうと決まれば、探索に向かう人員と戦闘準備を進める人員を決めていかねばならん。本当ならワシもいくべきではないのじゃろうが、必要であれば出向かねばなるまい」
この後、ほか勢力の回復具合も鑑みて、迫りくる危機への対策を進めていくことにした。
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お知らせ:
ということで、ここから危機発生の間にやるべきことが二つ出てきました。
まず一つ目が元帥主催のブートキャンプで、この後あかぎとアンチマギアがみっちりと鍛えなおされる予定です。
もし、こいつもついでに鍛えてくれというキャラがいましたら、先着で最大3キャラまで受け付けますので、お気軽にお尋ねください。
ただし、原作があるキャラでも原作の整合性無視して大幅に強化する可能性があるので、そこのところの影響をなるべく無視できる人がいいかなと思います。
あと、ヴェリテみたいな元から強いキャラは逆にあんまり効果がないので、不向きかもしれません。
次に探索組は、未公開の「エリア10」を目指して突き進むこととなります。
もし、この役目を担いたいという作者様がいましたら、喜んでお願いしたいのと同時に、全体で情報を先出ししますので、こちらもお気軽にお尋ねください!
一定以内に立候補とかなければ、普通に私の方で進めます。
あ、ちなみにアジダカーハとリルヤがいる場所とはまた別になります。
以上、お知らせでした!
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