先生が1番辛い
教室に戻りしばらくすると照屋さんが髪を人差し指でくるくるしながら入ってきた。
照屋さんは黙ってたら完璧美少女なので自ずとクラスのみんなの視線が動く。
そして様子がおかしい照屋さんにも気がつく。
様子がおかしいといっても髪を人差し指でくるくるしているだけだが照屋さんは喋らなければほんとに完璧なので、だからこそ不思議に思ってしまっているのだろう。
そして照屋さんは視線を集めながら俺の隣の席に座る。俺を睨みながら。
さっきまでも睨まれていたが授業中で席が1番後ろということもありクラスの人達には気がつかれていなかった。だが照屋さんが注目されることによって自ずと睨んでる先も見てしまうのだ。
最悪だ。今クラスのみんなの思考は1つだろう。
試しに全員の心の声を聞いてみると。
【あいつ何しやがったんだァァァ! 照屋さんめっちゃ怒ってるってェェ!】
これである。
他にも色んな声がある。
【俺、あの席じゃなくて良かった】
【ご愁傷さま】
【お前のことは忘れない】
【骨まで焼き尽くされるだろうが、塵ぐらいは拾ってやろう】
【あんなに睨まれるってまじで何したんだよあいつ】
そして響平の声もあった。
【弘お前謝ったんじゃなかったのかよ! 何言ったんだよあいつ!】
そこでチャイムがなる。全員が重い雰囲気の中授業が始まろうとしていた。
多分1番気まずいのは先生だろうな。
国語の先生の名前なんだっけ? たしか明るい雰囲気がすきな先生だったよな? まぁ、とりあえずドンマイ!
★
15分ぐらいたったけど未だに教室の雰囲気は暗い。
いつもはお調子者の奴だって今日は一言も喋らないことで余計に暗く感じる。
先生も場を和ませようとそのお調子者に話題を振るけど素っ気なく返されて終わる。
もう先生が1番可哀想だよ!
「よ、よし、今日はなんかみんな全然喋らないからこのプリントの問題を隣の人と解いてみましょう」
そしてその場の3人を除いてまたもやクラスの思考が一致する。
【時津 (くん)を殺す気かァァァ!?】
【こ、これで少しはみんなが明るくなっていつも通りの空気になるといいなぁ】
【と・な・り? それって】
照屋さんがギギギギギと擬音が聞こえてきそうな感じで俺の方へ首を向けた。
【と、時津くんと!? ど、どうしよ、さっきあんなこと言われちゃったし、恥ずかしいよ......時津くん、わ、私の髪の毛が綺麗って、可愛いって、撫でたいって......】
まてまてまて、最後の方は言ってないからな!? 俺は綺麗って言っただけだぞ!? いや、それでも十分恥ずかしかったわ!
「じゃ、じゃあ机くっつけちゃってねー」
えっと、これ、俺机くっつけていいんだよな? 照屋さん固まってるけど。
「時津くんと照屋さーん? 早くくっつけなさーい」
【時津 (くん)を殺す気かァァァ!】
なんかめちゃくちゃ心配されてるけど俺は無言で照屋さんの机に俺の机をくっつける。
そして先生がプリントを配り出し前の席からプリントが回ってくる。その際目でエールを送られた気がするが気のせいでは無いだろう。
そしてこのプリントの問題......わからん。
わからんってことは聞くしかないんだよな......まぁ、心の声が聞こえる前までよりは確実に抵抗ないけど。
むしろクラスのやつらがチラチラ見てくる方が抵抗あるわ。俺の事を心配してくれてるってのは分かってるけどね? なんか気まずいわ。
「照屋さん、ここ教えてくれませんか?」
「ふふっ、こんな問題も分からないのね」
えっ、照屋さんが笑った? めっちゃ可愛ーーじゃなくて、いや、可愛いけどそうじゃなくて初めて見たんだけど照屋さんの笑った顔。いや、実際はよく笑ってたりしたのか? よく考えたら心の声が聞こえるようになるまで照屋さんと喋る時顔とかまともに見れたこと無かったわ。なんて勿体ないことをしていたんだ俺は! 過去に戻れるならガツンと言ってーーやるのは可哀想なのでちょっとだけでも照屋さんの顔を見た方がいいよと優しく言ってあげよう。
「ーーこうなるのよ、分かった?」
「あ......聞いてませんでした」
「ふざけてるのかしら?」
「い、いや嬉しくてつい」
不味い、こんな時は心の声を聞いてなんて言うのが最適解か考えよう。
【時津くんが嬉しい? う、嬉しいってもしかして私と喋ること!? それか私と近くなること!? もしかして全部!? 時津くんに教える為だからってあんまり近づけなかったけど時津くんも私に近づいて欲しいってこと!? じゅ、授業中だしあんまり考えないようにしてたけど時津くんが望んでるんだから仕方ないよね】
......流石に怒ってると思ったけど全然そんなことなかった。
でも俺が望んでるって何!? 確かに照屋さんは美少女だし近づけて嬉しくないと言えば嘘になるが声に出して望んだ覚えはないぞ。
そもそもーー
「仕方ないから特別にもう一度教えてあげるわ」
そういいながらお互いの肩が触れる距離まで近づいてくる。
俺は咄嗟に離れようとする。
「私がせっかく教えてあげているのにどこへ行くのかしら? あなたは頭だけならず耳も悪いのだからちゃんと近づかないとだめでしょう?」
ぐっ、確かに頭は良くないしさっきはせっかく照屋さんが教えてくれてるのを聞いてなかったし反論出来ない。
それがなくても反論しないと思うけど。
それにさっさと教えて貰えばいい話だしな、うん。
「じゃ、じゃあ教えてください」
そしてまた照屋さんはお互いの肩が触れる距離に近づき教えてくれる。
正直頭に全然入ってこない。だって照屋さんめっちゃいい匂いだし肩すごい柔らかいし......て、だめだ、せっかく照屋さんが教えてくれてるんだからちゃんと聞かないと照屋さんに失礼だ。それに照屋さんもいくら俺が好きとはいえ今は心の声も真面目にどうやったらわかりやすいかとか考えてそうだし。
【時津くんすごいいい匂い! 今までこんなに近づいたことなかったけどやばい! それに肩もちゃんと筋肉ついてて男の人って感じだし。もっと触りたい......て、だめだめ、時津くんも真面目に私の説明聞いてくれてるんだし変なこと考えちゃ時津くんに失礼だよ私!】
すげぇ似たようなこと考えてた!? なんかすげぇ似たようなこと考えてたわ! えっ? 俺実はさっき心の中で1回謝ったんだよ? 邪なこと考えてごめんなさいって、すげぇ損した気分だわ。
「それで分かったかしら?」
「え? あ、その、聞いてませんでした」
「......次はないわよ?」
【時津くんとまだ触れ合える! やったぁ! でも、本当に聞いてなかったのかな? もしかして時津くんも私と少しでも長く触れ合いたかったりするのかな? さ、流石に自意識過剰だよね......でも、もしそうだったら嬉しいな......でもごめんね時津くん。これ以上は私の命に関わりそうだから今度はちゃんと聞いててね。最後だと思うと途端に名残惜しくなってきたちゃった。時津くんの匂いいっぱいかいどかないと♡】
......俺も照屋さんの匂いかいどこ。
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