照屋さんも成長してる
授業が終わった。
めっちゃいい匂いだった。すごい柔らかかった。
普通に考えたら俺すごいキモイけど、照屋さんだって俺の匂い嗅いでたんだしお互い様だろ。
そして響平が俺の方を見ながらそわそわしている。
やめてくれないかな? 傍から見てると好きな人に話しかけたくても話しかけられない奴みたいだから。
まぁ、響平の事だから俺の事心配してのことだろうな。てかよく見たら響平以外にも俺の方見ながらそわそわしてる奴らいるんだが、もしかしてモテ期か? いや、さすがにないか。
心の声を聞かなくたってわかる。俺が照屋さんに何をしたのか聞きたいとかだろ。俺の二の舞になんないようにとか考えてるんだろうな。響平も案外......いや、あいつは心配してるだけだわ。
そして話しかけられない理由は俺が席から動かず照屋さんが隣にいるからだろう。
そしてその隣の照屋さんといえば......まぁ、これは近づこうとは思わないな。
ただその心の声はというと......。
【いい匂いだったなぁ......えへへ、今日の私すごい時津くんと関われてる。もしかして今日なら一緒に帰ろうって言えるかな? 時津くんと私の帰り道途中まで一緒だし......よ、よし次の授業が終わったら学校も終わりだし誘おう。それまでは時津くんの匂いと体の事を思い出してよう】
まぁ、割と変態チックなこと考えてる。
あと今日俺照屋さんと一緒に帰ろうって誘われるのか!? 正直俺も照屋さんと帰れるとなるとすごい嬉しいけど......この素直になれない照屋さんが誘えるのか? 響平もちょうど今日部活だしな。まぁ、無理だったら俺の方から誘えばいいか。案外そっちの方がいいかもな、照屋さんから誘われるのなんて見られたら俺がいじめられてるんじゃないかと勘違いされそうだし。
そしてチャイムがなる。
★
帰りの準備が全部終わって早30分。
教室にはもう俺と照屋さんしか居ない。なんで30分も教室にいるのかというとすごい照屋さんが頑張って俺に一緒に誘おうと言おうとしているのだ。
最初は照屋さんが無理そうなら俺の方から言おうと思っていたのだが照屋さんの頑張ろうとしてる心の声が可愛すぎて無理だった。もうちょっともうちょっとと思ってるうちに30分もたっていたのだ。
30分もボーッとしてるのは照屋さんもどうしたんだろうと思うと思うので俺はスマホをいじってるフリをしている。
そして肝心の照屋さんの心の声。
【うぅ〜、6限目時津くんの事考えすぎていつもより時津くんの事意識しちゃうよぉ。今日はたまたまスマホ触ってるからまだ大丈夫! 今日の私ならいける! ただ、一緒に帰らない? って言うだけなんだから! たったそれだけ。よ、よし言う! 言うぞ〜】
「と、時津くん!」
バタッと椅子を引き立ち上がる照屋さん。
凄く珍しい光景だ。照屋さんは毒舌なの以外完璧だから。
「な、何?」
何故かいつも照屋さんには敬語になっちゃう俺だけど今回は普通に返事できたな。
あとなんか俺まで緊張してきたんだけど。
照屋さんと見つめ合い無言の時間が流れる。
いつもの照屋さんなら心の声で照れて現実の声では毒を吐いてくるけど今回は何も言われない。だからこそ長く感じる。どれぐらいたった? 何分何十分にも思える。
「きょ、きょ、今日」
照屋さんがこんなに緊張してるのを見るのは初めてだな。
心の声では聞いた事あるけど現実の声でこんなに緊張してるのはほんとに初めて見る。
思えば今日は照屋さんの色んな事を知れるな。
「い、い、い......国語の授業であんな簡単な問題も分からなかったのだからスマホなんていじってないで早く帰って少しでも勉強したら?」
【ち、違うよぉ、何言ってるの私、一緒に帰らない? って言うだけなのになんで言えないのぉ......でも明日こそはーーじゃない! いつも明日明日って思ってるけどほんとに明日誘えたことなんて無いんだから! 私時津くんが好き! 好き! これを時津くんに向かって言えたらいいんだけど......まだ無理だから少しづつ、少しづつでいいから私の気持ちを伝えられるようにならないと! 時津くんは窓の方を向いてまだ帰ってないし言おう! 耳が赤い気がするけど私のさっき言ったことで怒ってるのかな......】
「時津、くん」
「も、もう帰るよ?」
「わ、私......仕方ないかーー違う......私時津くんと一緒に帰りたいです」
「え? あ、うん、いいよ」
正直、あなたは寄り道しそうだし仕方ないから私も一緒に帰ってあげるわよ的な感じで誘われるのかと思ってたけど......思いのほか素直に言われたな。顔も真っ赤だし。やばい......照屋さんの恥ずかしがってる顔可愛すぎる。
なんなんだろうな女の子の照れ顔ってまじで可愛いよな。
いや、何考えてんだおれ。照屋さんが可愛いってことか。
照屋さんも成長してるんだな。いや、誰目線なんだよ。
「じゃあ帰ろうか」
「そんなに早く私と帰りたいのなら仕方ないわね。感謝しなさいよあなたが私と帰れるなんて」
あれれ〜、おかしいぞ〜? さっきまで素直だったのにな〜。まぁ、さっきあれだけ頑張ったんだから仕方ないか。
てか俺照屋さんに甘すぎないか? なんでだろ? 俺照屋さんの事今日の朝まで控えめに言って苦手だったのに。でも、照屋さんの心の声を聞いてから、急に可愛く見えだしたんだして......いや、照屋さんが美少女なのは知ってたが苦手意識が強すぎてそう見えなかったんだよな。
俺照屋さんの事......
「......好き」
あっ! やばっ、声に出てる!? 待って。
そして照屋さんの反応は首をこてんと傾げている。可愛い。
いやそうじゃなくてここに来て難聴系主人公かよ!? いや正直助かったけど......残念だった気がしなくもない。
【い、今時津くん好きって言った!? わ、私の事!? た、確かに今日は時津くんといっぱい目が合ったし、その、綺麗だとも言って貰えたけど......好きって言った!? いや、ありえない......よね、いつかは好きになってもらうけど......まだ違うよね、だって今日やっとまともに喋れるようになったんだし】
聞こえてるじゃねぇーか! え? 死んでい? 聞こえてるじゃん! しかもいつもなら結構自分にいい方に考える方だよね!? なんで今回に限って自信ないんだよ! いや、俺は聞いて欲しかったのか聞いて欲しくなかったのかどっちだよ!?
「何ボケっとしてるのかしら、来ないのならもう一人で帰るわよ?」
「帰りますよ、帰ります。照屋さんと一緒に帰りたいので」
「へ? あ、そう。早く行くわよ」
毒吐かれる覚悟だったんだけど大丈夫だったな。
動揺してたし、いつかデレるんじゃないか? 俺の目標にしよ。
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