トラウマ

 4限目が終わり響平を誘って学食に行く。

 あれから特に照屋さんとは何も無かった。

 傍から見たら凄く睨まれてるので、あいつ何したんだ? と思われてることだろう。1番後ろの席なので思われてるとしたら先生だと思うが。


「弘何食う?」

「んー、カツカレーで」

「おっけ、席取っといてくれ」

「了解」


 いやー、人の金で食べる飯は想像するだけで美味いなー。

 なんか異様に空いてるけどここでいいーーくないな。うん。やめとこ。

 通りで空いてる訳だ。だって照屋さんがいるんだもん。

 学食での照屋さんは俺と響平にとって軽くトラウマだ。

 あれは入学してすぐの頃だったな......響平と2人でめっちゃ美少女いるじゃん! と盛り上がり、なんで誰も近く座らないんだ? と軽く疑問に思うも美少女オーラで近づけないんだろうと思ってしまい俺と響平は近くに座ってしまった。

 今思えばあの時の周りの視線は勇者を見る目というより蛮勇を見る目だったもんな。

 響平と俺は最初うっきうきだったのに5分もしない内に縮こまっちゃったもんな。自分たちから座った手前立つわけにもいかないし、まさに蛇に睨まれた蛙だったよな。

 俺が昔のやな思い出を思い出してると響平がきた。


「席取れなかったのか?」


 俺は軽く指を指しながら言う。


「俺たちのトラウマを思い出してた」

「あ〜、あの時の飯はまじで味しなかったもんな〜」

「とりあえず席探すか」

「まぁ、そうだな」


 照屋さんの心の声を聞いてみようかとも思ったが、聞いてしまったらあそこに座りたくなる気がしたのでやめた。

 響平がいなかったら俺は心の声が聞こえるし良いが響平からしたら地獄以外の何物でもないだろう。そしてその席を選んだ俺を恨むんだ。


「おっ、いいとこ空いてるじゃん。弘もここでいいよな?」

「ああ」


 椅子に座りカツカレーを食べ始めると響平が口を開く。


「あの時は凄かったよな」

「トラウマ?」

「そうそう、逃げるように教室に戻ってたら皆俺たちを褒め称えてくれるんだからな」

「ははっ、まぁそうだな、でも俺達もそんな奴らいたら褒め称えるだろ」

「確かに、知らなかったとはいえ良くかの地獄を耐え抜いたなっ!、てな」


 そこからしばらく談笑していると響平が顔を青ざめ始める。


「どした?」

「あ、あれ」


 そう指を指すので、反射的にそっちに顔を向けると凄くこっちを睨んでる照屋さんがいた。

 響平が声を沈めて発する。


「さ、さっきの話聞こえてたか?」

「分からん、けど照屋さんって普通にしてたら美少女って感じなのに睨んだら美人って感じになるよな」

「お前何悠長なこと言ってんだよ! 俺たち呪い殺されるぞ!」

「バカっ、声がでけーよ、それこそ聞こえるだろ」

「わ、悪い」

「とりあえず知らん振りして食べてれば問題ないだろ」


 そう言いつつ俺もちょっと怖いので照屋さんの心の声を聞いてみる。


【時津くんと、えっと、よく一緒にいる人......何話してるんだろ、それにさっき時津くん1回こっち見たよね......私の妄想じゃないよね、でも呪い殺されるってなんだろ、私を見てから言ってたよね......もしかして私時津くん達にそんなふうに見られてるの!? 私そんなことするように見られてるの?! 時津くんに?! ど、どうしよう、髪の毛とか染めたら明るく見えてそんなこと思われないかな?】


 ......めっちゃ不安がってる!? いや、まてそもそも呪い殺されるとか俺は言ってないぞ! 言ったのは響平だ! やってくれたな響平......この恨み晴らさぬべきか。

 俺がそんなことを考えてるとも知らずに響平は俺の肩を揺すってくる。


「や、やめ、出るから、帰ってくるから」

「だ、だってみてみろよあれ、なんかブツブツ言ってるって! もうダメだ。ほんとに呪い殺される!」

「だ、大丈夫だって」


 確かにそう見えなくはないが、心の中では不安がってるだけだから。

 まぁ、それを響平に理解しろってのは無理な話なのは分かるけど。


「な、なにが大丈夫なんだよ!? 俺たちの命がかかってるんだぞ!」


【また、呪い殺されるって私の方見ながら......髪も無駄に長いからそんな風に思われるのかな? もうだめ、時津くんに嫌われたら生きていけない、早退しよう、こんな髪の毛早く切って髪も染めよう】


 ちょ、まてまて、思ってない思ってないから! 立ち上がろうとしてるってあれ!

 俺は照屋さんが立ち上がる前に立ち上がり照屋さんの前に急ぎ足で歩いていく。

 視線が集まる。

 俺はなるべく照屋さんにしか聞こえないように顔を近づけて言う。


「その髪、綺麗だと思います。その、サラサラしてて」


 死ぬ、死ねる! すごい恥ずかしい! 新しいトラウマ出来たわ! いや、正直髪が綺麗だと思うのは事実なんだけどほんとに恥ずか死ぬって。俺は涙目になりながら逃げるように響平の元へ戻る。

 すると響平が問い詰めてくる。


「お、お前何言ったんだよ、なんかすげー真顔になってるぞ照屋さん」

「え、あ、ああ、単純に謝っただけだ。響平限界そうだったし」

「大丈夫か? 何も言われなかったか?」


 なんだコイツさっきまで取り乱してたくせに俺の心配......イケメンかよ。イケメンだったわ。


「大丈夫、言われる前に逃げてきたから。一応謝ったんだから何も言ってこないだろ」

「そ、そうか」

「食べ終わったしさっさと教室もどろうぜ」

「お、俺お前に惚れるかも」

「やめろ」


 響平のキモイ言葉は流しつつ、照屋さんの心の声を聞く。

 真顔ってなんだよ真顔って! めっちゃ勇気出したのに、怖いから、聞かなきゃほんとに怖いから。


【☆$*÷1〆3*々*○〆→×○4々÷○&÷」々「^÷*○?$=×*=%〆♪<々☆8々○%18×*」×*<\○|*=*=8*〆×6×*=8「91☆々*÷*1〆>*1〆*4〆*…*〆〆*÷】


 あ〜......嬉しすぎて思考停止したって事でいいですよね? 普通だったらナルシストすぎてキモって自分で考えながらなるけど今回はそういうことですよね? 俺が気持ち悪すぎてああなってるとは考えたくないし、うん。きっとそうだ。

 それに心做しかちょっとだけ頬が赤い気がしなくもない。

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