第15話 大事なお知らせ……?

「大事なお知らせ……?」



このサムネを見て知奈は猛烈な不安を感じた。

まず、八月朔日はあまりこうした宣伝をしない事、

そして告知の書き方が全く違う事だ。


今まで「緊急告知!」「速報!」みたいな

”煽る系”の案件サムネは何度かありはした。


しかし、今回の様な書き方は今まで見たことが無い。


案の定、このツイートに他の人達も反応し、

杞憂民が発生すると同時にまとめサイト系も動き出す。

個人勢だと言っても中堅ライバーは伊達では無い。


知奈も不安になって色々調べてみるが

推測以上の情報は見つからなかった。


やはり今日の深夜定期配信を待つしか無さそうだ。


知奈はただ良いニュースである事を

祈る事しか出来ない。


……

………


そしてついに配信時間となる。


深夜にもかかわらず

たくさんの人が見に来ている中、

いつもの様に液体の中で髪を揺らしながら

眠り続ける八月蒴日・パトラクシェ。


調整中.

調整中..

調整中...


といういつもはワクワクする待機画面も

今日ばかりはもどかしく感じてしまう。


そして、少しした後に画面が切り替わり、

八月朔日は目覚めて辺りを見渡し静かに話し始める。


「……この声聞こえてるのかな。おーい。

 サンプルさん聞こえる? ボリュームは問題無い?」


視聴者はすぐに反応して「聞こえるよー」「おk」と

いう文字でコメント欄が埋まっていく。


「うわっ。今日はいつもよりサンプルさんいるね

 こんなに来るとは思わなかったよ。ありがとう」


コメント欄はいつもと比べて流れが速く、

またいつもは来ない人も集まってる為に

雰囲気も少し殺伐としている。


正直、状況が状況だから仕方ないが

知奈は今日の雰囲気はあまり好きでは無い。


しかし、それにも関わらず八月朔日は

いつものように穏やかに雑談を始める。


どうやら20分後、”大事なお知らせ”について話すらしい。


……

………



「……そうだね。そろそろ本題に入るね」


知奈はじっと画面を見つめる。


画面の向こうで八月朔日はゆっくり話し出す。



「皆さんご存じのとおり、僕は今育成ポッドの中で

 みんなと会える日を楽しみにしていながら

 何年もずっと過ごしていました」


……


「モニター越しではない外の世界は

 一体どれだけ輝いているのだろう」


「スピーカー越しではない本当の

 ”音”は一体どう聞こえるのだろう」


……


「でも、その日々ももうすぐ終わります」



……!?



ドキドキが止まらない。

”どっち”なの?ほづみ君。ほづみ君!



「色々考えた末に決めました」





「近日、この育成ポッドの電源を落として

 今までしてきた配信を終わらせたいと思います」



……


…………


………………



コメントは一気に加速していく。

Twitterでも速報ツイートが出回り始める。



そして、知奈はショックで何も考えられない。

彼が言ってる理由も頭に入ってこない。



この日常は永遠では無いと頭では知っていても

こんなに急に、そしてこのタイミングで来るとは

夢にも考えていなかった。



「本当に今までありがとう」



彼の口から聞きたくなかった言葉が

知奈の胸に突き刺さる。



「もちろん最後までみんなと楽しく遊びたいし

 それまで色々企画をやっていくからよろしくね」


「そして、最後の配信に来てもらえたら

 その時もっと色んな事を話せると思うから

 是非遊びに来て欲しいな」



そうだ。今、私に出来る事は最後まで

ほづみ君と一緒にいる事なんだ!


配信の一分一秒を大切にして

ほづみ君と一緒に過ごすんだ!


そう思いながら知奈は配信を見続ける。



「最後の配信日は……」





……えっ?



まって。



まって。



その日なの?




よりにもよってその日時なの!?




彼の口から発せられた配信日程は

ロボバトの決勝戦開始と全く同じ日時だった。



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【次回予告】

【11月28日更新!】


衝撃の配信から1日。

お店に出勤するねいねは

心ここにあらずの状態で、

お店自体の雰囲気もおかしくなっていく。


そして……


次回 推しVロボ第16話

明さん。それ本気で言ってる?


お楽しみに!

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