第14話 もしかして泣いてた……?
「そ、そんな……」
両腕と足一本を失い、満身創痍で
ボロボロになったパラスアテナを見て
知奈はショックを受けていた。
「決勝戦で戦うカイエンは見ての通り
別次元の化け物です。どうしたら
勝てるのかを考えなければいけませんねw」
内海は笑顔のままそう言うものの、
内心では勝てないというオーラが漏れている。
「戦う前から負ける事を考えてどーするっ!
今のバトルを見ただろ?付け入る隙はある!」
戸坂会長は強がりでは無く本心からそう言っている。
その変な自信はどこからくるんだろう? と
知奈は思いつつも、少しだけ羨ましくもなる。
特にここまで圧倒的な試合を見せつけられた時には。
パラスアテナは攻守バランスの取れた
非常に強力なロボットだった。
昨年なら間違いなく優勝していただろう。
更にパイロットの伊集院まりぃは
初実戦とは思えない天才的な操縦をしていた。
それは買収前のグリフォンチームパイロットが
弱すぎて可哀そうになるレベルだ。
しかし、それでもカイエンには勝てなかった。
おまけに序盤の決定的チャンスを一度見逃している。
もしそれが無かったらカイエンの完全勝利だったのだ。
「うぅぅ……」
「ねいねちゃん」
思わず暗い顔になる知奈とみぅ。
そこに試合が終わってコックピットから
降りたばかりの伊集院まりぃが声をかけてきた。
「まったく。天使さんは何そんな顔しているのよ!」
「まりぃさん……!」
「ご覧の通り残念ながら私の惨敗です。
カイエンはやはり強かったし化け物でした」
「はい……」
「しかし、決して無駄死にではありません。
私からのプレゼント、ちゃんと受け取りましたよね?」
特定の動作中、足首のホールドが弱く
バランスを崩しやすい事や、パイロットの未熟さ、
その他色々なモノを見せてくれた。
伊集院まりぃは試合前に私に言った事を
実際に実行してくれたのだ。
「は、はいっ!」
「私が出来る事はここまで。あとはあなた達次第です。
決勝戦で仇を取ってくれる事を期待していますわ」
まりぃはそれだけ言って待たせている記者や
インタビュアーの所へ戻ろうとしたが、
内海はそれを呼び止めた。
「まりぃさん」
「何よ?」
「あなたの戦いっぷり最高でしたw
正直見くびってました。 そんなに強かったんですね」
「……フンッ!」
まりぃはそのまま行ってしまった。
「ここまで善戦するとは思いませんでした。
もしあなたと戦っていたら私達は
間違いなく負けていましたよ」
まりぃの後姿を見ながら内海は
称賛の言葉をつぶやいた。
「まりぃさん、もしかして泣いてた……?」
同じく知奈も彼女を見送りながらつぶやく。
「私でもわかるくらい凄い気迫だったもんね。
あの人は本当に決勝戦でねいねちゃんと
戦いたかったんだよ」
「うん。 そうなんだろうね。 でも……」
「?」
「何であの人は私と戦いたかったんだろう」
「えっ!?」
みうは思わず大きな声を出した。
「だっていきなりお店にやって来て
勝手にライバル言い出して……」
「…………」
みぅは開いた口が塞がらない。
「まっ。落ち着いたら本人に聞けばいっか!」
あ。ダメだ。
なんだろう。変にムカついてきたよ。
みぅは少しずつ不機嫌になる。
「みぅ?」
「今日買い物頼まれたの忘れてたから
私、先に帰るね!」
みぅはいきなりそう言うと
会場の出口に向かって歩いていった。
「……? みぅ、どうしたんだろ」
知奈は不思議そうな顔をしながら
帰っていくみぅを見送った。
……
みぅは自分でもわからないくらい
イラついていた。
前々から思ってたけど
ねいねちゃん人の気持ちに鈍感過ぎ!
あそこまで好意を見せてるのに
全然それに気づかないなんて、
流石にあの人がかわいそうだよ!
「……それは私もなのかな?」
よくわからないけど無性に悲しくなった
みぅは寄り道せずにそのまま家に帰る事にした。
…
……
………
このようにして準決勝は終了した。
「ふぅっ。 今日は色々あって
流石に疲れたよ……」
知奈も会場から直で家に帰ってきた。
どうにか決勝まで進めたけど、
決勝戦の相手がチート過ぎて
勝てる気が欠片もしない。
「私の戦いもここまでかな?
それでもまりぃさんみたいに善戦して
ほづみ君に良いトコ見せなくちゃね!」
知奈はそう思いながらパソコンの
電源を入れていつもしている
ネットチェックを始めた。
色々あったけど家に戻れば
いつもの日常に戻れる。
知奈はそう思っていた。
しかし、今日はいつもと違っていた。
「……へっ? これ、何?」
パソコンの画面に映っているのは
毎日欠かさず見ている八月蒴日の
Twitterアカウント。
そして、そこには「大事なお知らせ」と
デカデカと書かれている配信用の
サムネ画像であった。
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【次回予告】
【11月21日更新!】
たった一行の文字が知奈の心を揺らす。
不安になり色々調べるが答えは見つからない。
そしてついに配信時間となる。
次回 推しVロボ第15話
大事なお知らせ……?
お楽しみに!
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