第2話 喫茶店
「いらっしゃいませ、1名様ですね。こちらの席にどうぞ」
1人の男がお客様を案内する。
「ご注文が決まり次第、お呼びください」
その店員とは紅羽柊人だった。
いじめの1件から翌日、柊人は姉の店である喫茶店の手伝いもといバイトをしていた。
「柊人~」
「何ですか姫奈さん」
柊人を呼ぶ女性店員は、姉である綺夏の友達である
見た目は、金髪でショートカット。
遊んでそうな見た目だが、根はかなり真面目なのだ。
「柊人、あんた彼女出来た?」
「何を言ってんだ」
「だって私見ちゃったんだよね~。昨日、可愛い女の子と一緒に帰っているところ」
「まあ色々あって送り届けてたんですよ。彼女ではないです」
「ちぇっ、つまんないな」
「姫奈さんの方はどうなんですか」
「聞かないでよ…」
「居ないんかい」
「だって~良い人居ないし~こんな所で働いていたら出会いがあるわけないし~」
「無い事は無いでしょ。お客様とでも仲良くなったら良いんじゃないですか」
「あんたこの店の客層知ってるでしょ」
「まあなぁ…」
彼らが働いている喫茶店は、基本的に女性客が多いのだ。
ごくたまに男性客がいるのだが、それでも女性客の方が多い。
「あんたを狙ったら綺夏にクビにされるし」
「狙うなよ…」
「弟はこんなにしっかりしているのに姉の方と来たら…」
「あら店長の悪口かな?」
柊人と姫奈が話している背後から店長である綺夏が声を出す。
「姉貴」
「綺夏っ!?」
「2人とも働きなさい」
「「はーい」」
綺夏の一言で仕事に戻る2人だった。
「綺夏~休憩入るわね~」
厨房から声が聞こえる。
「良いよー」
「じゃあタバコ吸ってくるね」
「はいはい」
厨房から出てきたのは黒髪のロングヘアの凛とした女性だった。
名前は、
「柊人」
「なんですか?」
「姫奈は、年齢=彼氏いない歴なんだから、あんまり言わないであげてね」
「ちょっと!!」
「分かりました」
「ほら2人とも!!」
綺夏に怒られながらも働く柊人と姫奈だった。
チリィーン…
店の扉が開かれる音が店内に響きわたる。
「「「いらっしゃいませー」」」
柊人と綺夏と姫奈は入って来たお客様に挨拶をする。
「あ、あの…紅羽君…」
「桐島さん?」
やって来たお客様は桐島雪香だった。
「はい。ご注文のコーヒー」
「ありがとう」
柊人は、雪香を案内し接客を行っていた。
「それで今日はどうかしたのか?」
「えっ…?」
「いや、何か用があって来たわけじゃないのか?それともこの店の売り上げに貢献してくれるのか?」
「えっと…。実は紅羽君に会いに来たの」
「そうなんだ。それでどうしたの?」
「なんか一人が怖くて…。信頼できる人は紅羽君しか居ないから…」
「そうか」
雪香は、不安そうな声を出す。
「まあ喫茶店とは言っても小さいからな。そこまで人気は無いんだよ。だから客もまちまちだ」
「ってことは…」
「居たきゃ居ろ」
「そっか。ありがとう」
「ああ。じゃあ俺は仕事に戻るから」
「うん」
柊人は、仕事に戻る。
「ねぇ柊人」
「なんだよ姉貴」
「店長と呼べ。それよりあの子は?」
「同じ高校に通っているご近所さん」
「へぇ…」
「ねぇねぇ!!柊人!!あの子って昨日の子だよね!?」
「なんであんたは面倒事を増やす言い方をするんだよ…」
姫奈は、昨日2人が一緒に帰っているところを目撃していた。
そして、綺夏はかなりのブラコンなのだ。
「ねぇ…。柊人、あなたと彼女は付き合っているの???」
「店長、圧が凄い」
「これだから綺夏には彼氏が出来ないだよ」
3人ともそれぞれの反応を見せる。
「綺夏、厨房手伝って~」
「仕方ない…」
「ほら店長、瑠乃さんが呼んでるぞ」
「行った行った〜」
瑠乃が綺夏を厨房に呼び、柊人と姫奈は追い払うように厨房に向かわせた。
「じゃあ私たちも働きますか」
「仕方ないっすね」
こうして各々の仕事を始めた。
今の時刻は、11時であり、人が増え始める時間だ。
店内もそこそこ席が埋まっていた。
ホールは、柊人と姫奈。
キッチンは、綺夏と瑠乃だ。
従業員は、この4人だけ。
綺夏、姫奈、瑠乃がこの店を開き、柊人はバイトしている形なのだ。
「お待たせしましたー。こちらガトーショコラとコーヒーになりますー」
「お待たせしました、こちらチーズケーキとアールグレイティーになります」
ホールで働く2人は店内を右往左往する。
キッチンにいる2人も忙しそうだ。
飲み物はホールの二人が、食べ物はキッチンに二人が担当している。
「いらっしゃいませー」
「ご注文はお決まりでしょうか」
これがこの喫茶店の日々だ。
「はぁ~疲れたぁ~。帰ってビール飲みたい」
「姫奈さん。まだ昼過ぎですよ」
「良いじゃん。客は居ないんだし」
「ピーク時を過ぎるといつもこれですもんね」
時刻は14時。
ピーク時を過ぎ、客足が減る。
「姉貴~」
「店長って呼びなさい」
「休憩入るわ~」
「良いよ」
柊人は、休憩を取り、真っ先に厨房に向かう。
「瑠乃さん。何かまかないあります?」
「そう言うと思って、はいサンドイッチ。2人分ね」
「ありがとうございます」
「ふふっ。本当に柊人はお人好しね」
「瑠乃さんこそ、わざわざ2人分用意してくれているなんて」
「私は何でもお見通しよ」
「ふっ、そうですか」
「ええ」
柊人は、瑠乃が作ったサンドイッチをトレーに乗せる。
そして、ホールに戻りコーヒーを2杯淹れる。
「店長、コーヒー2杯。後で払うわ」
「はいはい」
柊人は、綺夏にそう伝え雪香の席に向かう。
「待たせたな。はい、サンドイッチとコーヒー」
「良いの?」
「サンドイッチはまかないだし、コーヒーは俺の奢りだ」
「ありがとう」
「おう」
柊人は、サンドイッチとコーヒーを雪香に渡す。
「今まで勉強してたのか?」
「うん。学校の教科書は使えないから参考書で勉強しているの」
「まあそうだよな」
「うん…」
彼女はいじめのせいで教科書が使えないのだ。
教科書を開くと落書きの嵐。
そんなもの使える訳がない。
「桐島さんって字綺麗なんだな」
「そうかな…?」
「パッと見な」
「ありがとう」
雪香は、柊人に褒められてすこし顔に赤みが帯びていた。
「そこ、計算ミスしてるぞ」
「あっ、本当だ」
「今度のテストは、その辺りの範囲が多そうだからな」
「そうなの?」
「ああ」
「そっか。ありがとう」
「おう」
こうして見れば2人とも、ただの学生のように見える。
喫茶店で勉強しているただの学生に。
いじめを受けていた被害者とそれを救った男だとは、傍からでは分からない。
「なぁ」
「なに?」
「お前は…桐島さんは俺しか信頼できないって言ったよな?」
「うん…」
「俺の信頼している人もまだ信頼はできないか?」
「…分からない」
「そっか」
「ごめん」
「謝るな」
「うん…」
雪香の傷は柊人にも分かりはしない。
だからこそ、何にも言う事が出来ないのだ。
「すぅ…」
柊人はコーヒーを一口飲む。
「もぐもぐ…」
柊人は、サンドイッチを口に入れる。
「なんかハムスターみたいだね」
「ん?」
「あっごめん」
「気にするな」
「うん…」
「俺ってそんなに怖いか?」
「えっ?」
「だって昨日の件から俺と話す時、屋上の時よりも覇気を感じなくなったというか何というか」
「あの時は、ごめん」
「謝るな。あの時は俺も言い過ぎた」
屋上の一件は、お互いに謝る事で解決した。
「このサンドイッチ美味しいね」
「そっか。厨房も大喜びだろうな」
「紅羽君はホールなの?」
「そうだけど」
「じゃあコーヒーを淹れたのは…」
「俺だな」
「そっか」
雪香は、コーヒーを口に含む。
「美味しい…」
「…」
それ以降、2人には会話は無かった。
しかし、2人ともこの沈黙に心地よさを感じていた。
「おーい柊人」
姫奈が柊人を呼ぶ。
「もう休憩終わりっすか」
「私もそろそろ休憩取りたいから」
「ああ、もうそんな時間なんですね」
柊人は、席から立ち上がり、トレーにカップと皿を乗せる。
「じゃあ俺は、仕事に戻るからゆっくりしていけよ」
「う、うん」
柊人は、トレーを持ちキッチンへ向かう。
「ねぇねぇ」
「は、はいっ」
姫奈は雪香に耳打ちする。
「閉店は19時なんだけど、その後に柊人を貸してあげるね」
「え、えっと…」
「あなたと柊人に何があったか分からないけど、私は応援してるからさ。何かあったらお姉さんに相談してね」
「あ、ありがとうございます」
姫奈は、柊人と雪香の関係性を察する。
雪香が柊人に対して特別な感情を抱いているのも一目で分かっていたのだ。
「にしてもあなた可愛いね。名前は何て言うの?」
「私は、桐島雪香です」
「雪香ちゃんね。私は七里姫奈。よろしくね」
「よろしくお願いします…」
「(なるほどね…)」
姫奈は、雪香に距離を置かれていることに気づいた。
「まあ何かあったら柊人でも良いし、私でも良いから相談すると良いよ。柊人に関しては、一度相談に乗ったら最後まで面倒見てくれるから」
「あ、あのっ」
「ん?」
「姫奈さんと紅羽君とはどういった関係なんですか?」
「そうだなぁ。何て言えば良いんだろう。強いて言えば、昔の男ってとこかな」
「そ、そうなんですね」
「まあ、今はこうして同じ店で働く先輩後輩だよ」
「…」
「なるほど。もしかして、雪香ちゃんも柊人に救われたってところかな?」
「そ、そうです…」
「あいつの良い所ではあるんだけどねぇ」
姫奈もまた紅羽柊人という男に救われた一人だった。
その特別が自分だけじゃないと知った雪香は、表情を曇らせる。
「まあ柊人は、本当に助けたい人しか助けない人だよ。誰をも救うほどの聖人ではないから。安心すると良いよ」
「はい…」
「じゃあ私は、別の席に行くね。ごめんね邪魔しちゃって」
「い、いえ…」
姫奈は席から立ちあがる。
「あっ、そういえば」
「?」
姫奈は振り返り、雪香の顔を見る。
「柊人の連絡先知ってるの?」
「い、いえ…。持ってないです」
「そっか…。じゃあ帰りとか交換したら良いんじゃない?。まあ欲しかったらだけど」
「はい…」
「じゃあゆっくりしていってね」
姫奈は、雪香にそう言い残し、席を立った。
「(かっこよく立ち上がったけど、どうしよう…)」
姫奈の休憩はまだ残っているため、残りの時間をどうするか考えるのであった。
一方、その頃の柊人はキッチンに居た。
「瑠乃さん。ありがとうございました。桐島さんも美味しかったって言ってましたよ」
「あらそれは良かったわ」
「それで…姉貴は何やってんだ?」
瑠乃に、まかないのサンドイッチのお礼を言うと、自然と綺夏に目が行ってしまった。
「弟が女の子と話している所を目撃して、ショックを受けてるのよ」
「女の子って…。ここの店員、俺以外女性じゃねぇか」
「あらあら。私の事を女の子って思ってくれてるのね。嬉しいわ」
「まあそうでしょ。例え俺と年齢が8歳差でも」
「あらあら女性に年齢の話はタブーなのよ」
「そうっすか」
柊人と瑠乃が話している間も綺夏はずっとショックから立ち直っていなかった。
「じゃあ俺はホールに戻りますんで」
「行ってらっしゃい~」
「…」
柊人は、キッチンを後にしホールに向かった。
ホールに戻った柊人が、目にしたのは雪香と姫奈が何かを話している所だった。
「(…まあ女の子同士の方が話しやすい事でもあるのかな)」
柊人は、接客に専念することにした。
ピーク時を過ぎたとはいえ、お客様が居ないというわけではない。
この時間が空いているので、休憩を交代で取る事が多いだけなのだ。
「コーヒーが一つ、ティラミスが一つですね。かしこまりました。少々お待ちください」
注文を聞き、キッチンへと向かう。
「ティラミスを一つお願いします」
「はーい」
「…」
「店長も働け」
未だに立ち直らない綺夏だった。
時刻は、19時を回り閉店の時間となった。
今日も無事、一日を終え片づけを始める。
その間、雪香は勉強で時間を潰していたようだった。
「桐島さん」
「紅羽君?」
「お腹空いていないか?」
「そういえばそうかも」
「少し待ってろ。何か作って来るから」
「紅羽君が作るの?」
「嫌か?」
「そういう訳では無いけど…」
「じゃあ作ってくる。何か食いたいのあるか?出来ればこのメニュー表の中で」
「えっと…」
雪香は、メニュー表を見る。
「な、何でも良いよ」
「分かった」
それだけを言って柊人は、キッチンへ向かった。
「柊人」
「姫奈さん?」
キッチンに向かう途中の柊人は姫奈に呼び止められる。
「あの子の連絡先聞いておいたら?」
「どうしてって聞く方が野暮ってやつですかね」
「分かってんじゃない。あの子は勇気出してこの店に来たんでしょ。だったらあんたからその勇気を買ってあげなさい」
「はいよ」
姫奈は、それだけを伝え更衣室に入って行った。
柊人は、その言葉を聞いてキッチンへ入る。
「あら柊人、あなたが作るの?」
「まあな」
「羨ましいわね」
「また今度な。3人分は面倒くさい」
「ふふっ。楽しみにしてるわね」
「というか姉貴は?」
「あら?さっきまでそこに居たんだけど」
「面倒くさい事起きてる気がするな」
「そうねぇ」
キッチンには、柊人と瑠乃しか居なかった。
姫奈は、更衣室にて着替えていた。
しかし、綺夏の姿だけが無かった。
では、どこにいるかと言うと…。
「あなた名前は?」
「桐島雪香です」
「そう。私は、紅羽綺夏。柊人の姉よ」
「あなたが…」
綺夏は、雪香に向き合うように座っていた。
「率直に聞くけど、あなたは柊人の事が好きなの?」
「…はい」
「そう…」
「…」
綺夏の質問に対して、雪香は『はい』と答えた。
その返事だけで、綺夏は雪香の本気である事を気付いた。
それだけで、綺夏は十分だった。
「じゃあ応援する」
「えっ?」
雪香は、予想外の返事に驚きを隠せなかった。
「私は、確かに柊人の事が大好きだよ。私に残されたたった一人の家族なんだから」
「…」
雪香は、柊人に家族の事を聞いていた。
両親はもうこの世に居ないことは知っていた。
「だけど、私のわがままでこれ以上柊人に負担をかける訳にはいかないから。この喫茶店ですら私のわがままなんだから」
「そうなんですね…」
「うん。だからあなたが本気で柊人を思っているなら、応援する。だけど、もし柊人を傷つけたら、私が許さないから。それだけは覚悟してね」
「はい」
綺夏の言葉は本気だった。
雪香にもその言葉の重みは伝わった。
「お待たせ」
「紅羽君」
「柊人」
2人が話している間に、パスタが盛り付けてある皿が割り込んだ。
「姉貴、どいて」
「はいはい」
綺夏は、立ち上がり席を譲る。
「じゃあさっき言った事は忘れないようにね」
「はい」
綺夏は、片付けへと向かった。
「すまんな」
「大丈夫」
「そっか。じゃあとりあえずはい、パスタ」
「ありがとう」
ミートソーススパゲッティを柊人は差し出した。
「いただきます」
「おう」
雪香は、柊人の作ったパスタを口にする。
「美味しい」
「そうか」
「うん」
柊人もパスタを食べ始める。
「そういえば」
「ん?」
「桐島さんって何組だっけ?」
「6組」
「そっか」
「紅羽君は?」
「13組」
「そうなんだ」
2人は、同じ学年であるのだがクラスは違う。
それに2人が通う学校は、月代高校。
クラスは一学年13クラスもある大きな学校だ。
「紅羽君って頭良いの?」
「さあ?」
「ねぇ」
「まあ学校のテストだと学年1位とかだな」
「すごいじゃん」
「でもまあ、学年1位の特典が欲しいからな」
「学費免除ってやつ?」
「まあな。家計はこの店にかかっているようなもんだからな。学費なんてものにお金使っている場合じゃ無いから」
「紅羽君って本当にすごい人なんだね」
「勉強だけはな」
「でも喧嘩も強いよね」
「あれはなぁ。ほらあそこにいる金髪の人居るじゃん」
「うん」
柊人は、着替えを済ませた姫奈を指さす。
「あいつに護身術とか色々叩き込まれた」
「姫奈さんに…」
「ん?ああそういえば昼に話してたな」
「うん」
柊人と入れ替わりで休憩に入った姫奈は、雪香と話していた。
「あの人と付き合ってたの?」
「…また急だな」
「ごめんっ!やっぱ聞かなかったことに…」
意識せず口に出てしまった雪香は、慌てて取り消そうとする。
「いや、別に言っても良いけど。隠しても無いし」
「じゃあ…」
「付き合っては無いぞ。ただ身体の関係はあったってとこだ」
「そ、そうなんだ」
「ああ」
「じゃあ今までに彼女とかは…?」
「居ない」
「そっか」
雪香は、驚きの事実を聞くものの、最後の言葉でどこか安心していた。
「…明日も来るのか?」
「えっ…?」
「いや、明日も来るのか気になっただけだ」
「紅羽君が嫌じゃないなら…」
「好きにしろ」
「じゃ、じゃあお邪魔するね」
「ん」
明日も雪香は、店に来ることにした。
2人は、パスタを食べ終え、柊人は、皿をキッチンに持っていく。
その間、雪香はレジに立って居た姫奈に会計を頼んでいた。
「洗い物は私がしておくから、あの子を送ってあげなさい」
「姉貴?」
「良いから行った行った」
「分かったよ」
キッチンには、綺夏が残っており洗い物をすると言い出した。
「さっさと着替えて送って来なさい」
「へいへい」
半ば強制的に柊人は追い出され、更衣室に向かった。
そこで、店の制服から私服に着替える。
着替えを済ませた柊人は、雪香のもとへ行く。
「待たせたな」
「ううん。大丈夫だよ」
「じゃあ行くか」
「うん」
2人は、店を後にし、雪香の家まで行く。
「夜はまだ寒いな」
「そうだね」
3月とは言え、夜はまだまだ冷える。
柊人は、白い息を吐く。
「なぁ」
「なあに?」
「連絡先交換しないか?」
「えっ?」
雪香の家に近くに着くと柊人は連絡先の交換を願い出る。
「嫌なら別に良いけど」
「お願いします」
「おう」
こうして2人は連絡先を交換したのであった。
「何かあったら連絡しろ。時間があれば見るから」
「うん。本当に何から何までありがとう」
「気にするな」
連絡先の交換済ませ、雪香の家の前まで着いた。
「じゃあまた明日な」
「うん。また明日」
2人は別れを告げる。
また会う事を約束して。
「家に帰ると面倒な事になりそうだなぁ」
柊人は、姉の待つ家へと帰るのであった。
「それで柊人、私との約束守ってくれた?」
「あらあら柊人ったら、いつの間に成長して」
「柊人、ちゃんと清く正しい交際をしなさい」
「いや、付き合ってないから。というか何で姫奈さんに瑠乃さんが居るの?」
家に帰ると、綺夏だけでなく、姫奈と瑠乃が待っていたのだった。
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