第3話:記憶の断片

翌日、俺はみんなよりも早く目が覚めた。

「朝食時間まで走り込みするか。」

外に出るとハルカが走っていた。

「あっ、おはよう。スグル。」

「おう、おはよう。」

「スグルは何しに外に来たの?」

「ハルカと同じく走り込みだよ。ハルカはいつからやってるんだ?」

「私は20分前くらいから始めた。よければ一緒にどう?」

「いいけど、ついてこれるのか?」

「大丈夫。私はスグルよりも体力には自信がある。」

そう言ってハルカと一緒に走り始めた。

「はっはっはっ」

2人の呼吸音が響く。

「ハルカは俺と出会った時のことを覚えてる?」

「もちろん忘れるわけない。」

「あれは今日みたいに少し肌寒い日だった。」

ーーーー

「ふぅ、少し休もう。」

その日は朝から私は畑の手入れをしていた。

「元気に育つといいな。」

私は作物の豊作を願って木陰で少しうたた寝をしていた。

「ドスッ」

その大きな足音を聞いて私は目が覚めた。

「〜〜!」

私は恐怖のあまり声が出せなかった。

「お父さん!お母さん!」

そう大きな声で呼びかけながら家の方を見ると

そこにはボロボロになった家があった。

少しずつ近づいてくる猪を見ながら私はもうダメだと確信した。

「おい!」

「!」

私は声のする方へと視線を向けると縄を持った私と同い年くらいの子が立っていた。

「お前!」

その声と同時に

凄いスピードでこちらの方へと走ってきた。

すると、猪の口に持っていた縄を縛った。

それに怯んだ猪は逃げていった。

「おい!お前!なんで大きな声出さなかったんだよ!」

「出しても助からなかった。」

「今の猪は大きな音を出すと逃げていくんだよ!

そんなんも知らないのか?」

「知らなかった。」

「次からは気をつけなよ!暗くなってきたからもう今日は家に帰ったほうがいいんじゃねえの?」

「家はさっきの猪にボロボロにされた。」

「父親と母親は?家にいるんじゃないのか?」

「わからない。」

「一緒についてやるから確認しに行こうぜ。」

「わかった。」

そこにはソファの綿だらけになった部屋しかなかった。

今日の朝にはいたはずなのに。

「誰もいない。」

私が落胆していると

「買い物にでもいったんじゃねえの?」

そう伸びをしながら彼は言った。

「いつもならもう帰っているはず。

私は捨てられた。もう私はいらない子。」

「そんなはずねぇよ!きっと商店街の方に行ってるはずだって!」

「とりあえずついて来い。」

「何故?」

「こんなボロボロの家だったら何もできないだろ。

今日はもう暗いし明日から2人とも探そうぜ。」

「ありがとう。何故こんなにも親切にしてくれるの?」

「父さんに女の子には優しくしなさいって口うるさく言われてるからな。」

「それに今日は寝る場所ないだろ。こんな家じゃいつ襲われるかもわかんないからな。」

「ありがとう。」

「もうお礼はいいって。ほら帰るぞ。」

そう言い手を繋いだ。

「あっ」

「なんだ?嫌だったか?」

「い、嫌じゃない。」

私は初めて男の子に手を握られた。

それから何日も両親を探したのに全く手がかりも掴めなかった。

「やっぱり私は捨てられた。もういらない子なんだ。」

泣きそうになった時

「またかよ。ほら、捨てられてても今はもう居場所があるだろ?」

「おーい」

そう言いながらシンスケが走ってきた。

「ちょっと早いよ2人とも。」

ーーーーーー

「あの時のスグルはかっこよかった。」

「なんだよ。今はかっこよくないのかよ!」

「そんなことない。でも、女の子に負けてちゃまだまだ。」

「ハルカが体力ありすぎるだけだって!!もうグラウンド何十したと思ってんだ!」

「まだ15周しかしてない。」

「してないって。今日から訓練あるのにそんな疲れることやっていいのかよ?」

「問題ない。私はスグルとは違って体力があるから。」

「違ってってなんだよ。」

「ハルカ。久しぶりに笑ったな。」

「え?笑ってた?」

「おう!3年ぶりじゃないか?」

「確かに。」

「久しぶりに笑うと可愛いな!」

「!」

その瞬間ハルカは少し顔が赤くなった。

「きゅ、急にそんなことを言われると少し恥ずかしい。」

「そうか?俺はもっとハルカに笑ってほしいな。」

「スグルがそう言うのなら善処する。」

「おう!頼んだぜ!」

「おっ、そろそろ朝飯の時間だな。」

「もうそんな時間。スグルと話していたらすぐ時間が経ってしまう。」

「一緒に食堂まで行こうか。」

「そうしよう。」

食堂に移動すると誰かが立っていた。

「お前がスグルか?」

「そうだがお前誰だ?」

「俺の名前は加藤ユウヤ。お前に話があってきた。」

「話ってなんだ?」

「ここで話すのもあれだから少しこっちにきてくれ」

俺はユウヤと名乗る人についていった。

「なぁ、スグル。」

「なんだ?」

「お前の隣にいる女の子は誰だ?」

「ハルカはだけど。中島ハルカ。」

「そうか。突然だけど…お前のハルカを俺にくれ。」

「…は?」

「だから、お前の…」

「わかってるって!聞こえなかったわけじゃ無いから!」

「それで返事は?」

「返事って、別に俺のでも無いし好きにすればいいじゃ無いか?俺とあいつは幼馴染でもあり、親友でもあるから酷いことをしたら承知しないからな。」

「ありがどう!!!」

ユウヤは泣きながら俺に抱きついてきた。

「うわ!汚ねえな!離れろよ!!」

「う〜!!お前は俺の一生の親友だ〜!!」

「わかったって!!わかったから離れてくれ!!飯の時間がなくなる!!」

「それもそうだな。早く行こうぜ。」

「お、おう」

急な切り替えに俺はだいぶ驚いた。

「スグル。もっと野菜を食べるべき。どうしてもと言うのなら私が食べさせてあげよう。」

「いらねぇよ!俺はもう子供じゃねぇ!!」

「おい。スグル。」

「ん?なんだ?ユウヤ。」

「う、」

「う?」

「羨ましいんだよテメェ!!」

「は!?なんなんだよ急に!!」

「ズキッ」

「い、痛え!」

「お、おい、どうした?」

「急に頭痛が」

何故かこの光景を見るのは初めてでは無い様な…

それよりもなんなんだよ。この頭痛は?

何かが流れ込んでくる…

ーーーー

「羨ましいんだよ!!テメェ!!」

「やめろよ!服が破けちゃうだろうが!!」

ーーーー

なんだこの本。確か漫画って言ったっけ?

なんで俺がこんなものを読んでんだ?

「スグル!!スグル!!」

「ハッ!」

「大丈夫!?スグル!?」

「シンスケ…俺はどれくらい気を失ってた?」

「ほんの数秒だよ!大丈夫なの?」

「あぁ、もうなんともねぇ。」

「それは良かった。」

「なぁ、シンスケ、後でちょっといいか?」

「?わかった!」

朝食をとり終えた後シンスケにあのことを話した。

「なぁ、シンスケ。漫画って知ってるか?」

「あの貴族たちが読む絵が描かれた紙のことかい?」

「そう。その漫画、俺さっき読んだ。」

「何言ってんのさ。さっきまで朝ごはん食べてたじゃ無いか?」

「嫌、気を失ってた時に。」

「!もしかして旧人類の記憶かい!?」

「多分そうだと思う。」

「どうして急に。」

「俺とユウヤが喧嘩してた時のことが似ていたんだ。その漫画の内容と。」

「ということは旧人類の記憶のトリガーは似ていることが起きるということなんだろうか?」

「わかんねぇ。でも昔は良く寝てる時に記憶を見ていたぞ?」

「そうなんだ。だとしたらなんで今回は起きている時に。それになんでこんなにも頭痛が起きたんだろうか?」

「俺もよくわかんねぇ。」

「まあ、ゆっくりと調べていこう。」

「ところで頭痛はもう大丈夫?」

「あぁ。もう問題ない。」

「そっかよかった。もうそろそろ訓練が始まるよ。グラウンドに移動しよう。」

「それもそうだな。ハルカを呼んでくる。」

「わかった。」




アラクネ!登場人物紹介!

名前:佐藤スグル

年齢:10歳

血液型:B

特徴:5歳の時から旧人類の記憶を時々見ることができる。ハルカを救った過去あり。

ユウヤから激しい嫉妬を受けている。


ウラヤマシインダヨクソガ!!!

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