第2話:始まり

アラクネが俺たちの国に攻めてきてからようやく3年が経とうとしている。

今でもあの日は昨日のことの様に覚えている。

「ねぇ、スグル。」

「ん?、どうした?シンスケ?」

「やっとだね。」

「そうだな。やっとここまで来た。」

俺とシンスケはとても綺麗な夜空を眺めながら会話を交わした。

「ここまで長かったな。やっと仇を取ることができる。」

「兵士になっても3人で生き残ろうね。」

「あぁ、絶対にだ。」

俺たち3人は、この3年間この国の中心部の保護施設で生活をしてきた。

その時もずっと3人で行動してきた。

「明日も早いから早く寝ようよ。」

シンスケがそう提案してきた。

「それもそうだな。」

「そうしよう。」

「おやすみみんな。」

『おやすみ』

次の日俺たちは朝早くから訓練場に向かった。

「ここが訓練場か。」

「やっぱり中心部は僕たちのところとは比べ物にならないくらい大きいね。」

「きっと沢山人も来るだろう。」

訓練場の中に入ると改めてその大きさを実感することができた。

「君たちも今年から兵士になるのかい?」

後ろから声が聞こえた。

「そうだけど、君たちは?」

「俺達も今年からだ。名前は高橋ダイスケだ。」

「僕は橋本カイトだよ。よろしくね。」

「私は、滝川マリ。」

「ダイスケにカイトにマリだな。よろしく。」

俺達と同じような3人組と集合時間がくるまで話し合った。

「そろそろ集合時間が来るな。移動しようぜ。」

そうダイスケが言いみんなで集合場所に移動した。

「わかってはいたけどやっぱり多いね。」

「そうだな。」

俺たちがみた光景はおよそ3000人が同じグラウンドにいた。

俺達もそこに入っていって少し経つと前から教官の話し声が聞こえた。

「今日からお前達の教官を務める山田タカトシだ!

俺はお前たちを絶対に死なせないように鍛える!毎日ハードな訓練になるがしっかりついてきたまえ!」

「こんなにも子供がいる中であんなにも声が通る人は初めてみた。」

「確かにさすが中心部か。」

「早速だがグループにわかれてもらう!」

「どこのグループか確認した者から各自寮に戻れ!」

そう山田教官が第一グループから順に名前を書かれた紙を配っていった。

(第三グループ)

佐藤スグル

田中シンスケ

高橋ダイスケ

滝川マリ

中島ハルカ

橋本カイト

〜〜

〜〜

〜〜

俺達3人だけではなくさっきあった3人とも同じグループにわかれた。

「同じグループになったな。スグル。」

「おう!」

俺はダイスケと話しながら寮に向かった。

「じゃあなハルカとマリ。また明日。」

「えっ」

ハルカがなんとも間抜けな声を上げた。

「どうしたの?」

そうシンスケが尋ねると

「いつもは同じところで寝ていた。だからこっちに来ても一緒に寝るべき。」

「いや、男子寮と女子寮に分かれてんだからお前は向こうに行かないとダメだろ。」

「でも」

「明日の早朝からまた会えるんだ。夜くらい離れていても大丈夫だろ。」

「…それもそう。ではまた明日。」

「おう。おやすみ。」

「おやすみなさい。」

それから俺達は男子寮でダイスケやカイトとシンスケと共に話し合った。

「スグルはどこ出身なんだ?」

「南の方だぞ。シンスケもそこだ。そういうダイスケはどこなんだ?」

「俺は北の方からだ。同じくカイトもそこ出身だ。」

「へぇ、そういえばお前達は3年後どこの兵団に所属するんだ?」

そう俺が聞くと

「其の筋兵団かな。やっぱり一番安全だし。お前達は?」

「俺は返報兵団だ。」

そう答えるとダイスケたちは信じられないと言わんばかりの顔をした。

「返報兵団って一番危ないとこなんだぞ!わかっているのか!?」

「わかってるよ。お前たちはあの化け物を見てないのか?」

「そういえばそんなことがあったな。確か南の方だったよな。」

「あぁ、俺の両親と恩人はそいつに喰われたんだ。」

「…なんか悪いことを聞いたな。」

「いや、別にいい。」

「それでどうして返報兵団なんだ?両親の代わりに生きようとかは考えなかったのか?」

「両親はそう思ってるだろうけど、俺は仇を取らないと気が済まないんだ。」

「そうか。頑張れよ!」

「あぁ!」

「なぁ、意気投合してるとこ悪いんだがお前あの化け物を見たんだよな?」

「あぁ、確か、木下ヨウタだったか?」

「そうだ。よろしく。」

ヨウタの名前は同じグループにいたから覚えていた。

「でさ、あの化け物はどんな形をしていたんだ?」

「そうだな、主にいたのはキリギリスの様な身体に人間の頭がついた様な感じだった。」

「主にってことは他にもいたのか?」

「そうだ。俺の両親と恩人を喰ったのは身体が蜘蛛の様だった。」

「気持ち悪いな。そいつらは他に何か喰っていたのか?」

「特に喰ってなかったぞ。牛とか鳥とかの家畜は興味を示さなかったから。」

「あくまで人間が捕食対象なのか。」

気づけば周りにはヨウタやダイスケ以外にも沢山の人が集まっていた。

「そういえば俺、みんなに言ってなかったことがあるんだ。」

そうみんなに旧人類の記憶があることを明かそうとした。

「俺、旧人類の記憶が…」

「そうだ!スグル!明日も早いんだし早く寝ようよ!!!」

「このことはまだ黙っておこう。」

そうシンスケが耳打ちした。

「そうか?まあ確かにいい時間だな。」

「わかった。」

俺もそう答えた。

彼らは少し不思議がっていた。

明日から頑張ろう。

そう思い気絶したかの様に眠ってしまった俺だった。







アラクネ!豆知識!

訓練兵は主に対人や知識、そして対化け物の三つを鍛える。

これらは単元制になっておりそれらを全て落とすと個別に通常の約2倍の訓練を行うことになる。

そうなった訓練兵は特別訓練兵と名前が変わる。

何故かって?

それは死んでもらっては困るからな!!

by山田教官。

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