化け物が蔓延るこの世界で

ばらぃろ

第1話:希望と絶望

3030年。その年は人類のとてつもない進歩を遂げた年でもあり絶望のどん底に落とされた年でもあった。



世界中で時間をとめる機械が発明された。

それも最高9000万年まで時を止めることができる。

これは人類最高の発明品と言ってもいいだろう。

だがそれと同時に世界中で化け物が出現し始めた。

頭部は人の様な形をしており身体は虫の様な体格をしている全長15mほどある。

我が国日本はたったの四体の出現だけで日本人は滅ぼされた。

他の国でも少ない個体で人間、ゴリラ、チンパンジーなどの人の様な形をした動物が一瞬にして怪物の胃の中に入った。

怪物の名はアラクネ。

アラクネは人の形をした動物以外は捕食対象ではないらしい。

人類が滅びる前に最高の発明品、時間停止の機械を作動させれたのは、アメリカのロサンゼルスと日本の東京だけだった。





人類が滅亡しておよそ8500万年が経とうとした頃

自然界はとっくに人類がいなかったかの様に動物とアラクネが生活をしていた。

ロサンゼルスと東京以外は。

そして現在、人類が滅亡してから9500万年後

新たな人類が新しく誕生した。

旧人類とは比べ物にならない程の知識と技能を持ち合わせて。

新人類はあっという間に日本を中心に国を広げていった。

しかし新人類はまだアラクネの恐ろしさを知らない。

たった1人を除いて。



「何度も言わせないでよ!なんだよアラクネって」

「だから外の世界にいる化け物なんだって!」

俺の名前は佐藤スグル。

新人類と呼ばれる中でたった1人の旧人類の記憶を持つ人間だ。

新人類はおよそ120年で旧人類よりも進歩している。でもみんなはあの怪物を知らない。あいつのせいで旧人類は滅ぼされたんだ。

「ハルカはどう思う?」

「私はスグルの言葉を信用する。確証はないけどスグルが言うのだからきっとそうに違いないと思う。」

「ハルカまで!」

「そうゆうシンスケはなんでこんなにも信用しないんだ?」

「だって120年だよ!そんな化け物が本当にいるんだったらとっくに僕たち死んでるよ!!」

「わからないじゃないか!例えば俺たち新人類が誕生するまでに数が減ったとかさ!」

俺たちは小さい時からずっと一緒だった。

名前は中島ハルカと田中シンスケ。

「スグルが嘘つくとは考えられないけど、本当だって信じたら夜も眠れないよ。」

「そもそもスグルの旧人類の記憶があるってことも本当かどうかもわかんないんだよ?」

「ハルカはなんでこんなにもスグルのことを信用するの?」

「…スグルは私を助けてくれた。あの時スグルが勇気を出して救ってくれなかったら今の私はなかった。」

「そうだけどさ…」

昔1.2年前、俺は猪に食べられそうになっているハルカを命がけで助けたことがある。

旧人類の時と比べて9500万年も時が経ったから色々な動物が巨大化している。

「まあ、俺も曖昧なんだよ。確かそんな奴がいた様な気がするだけだ。あくまでそんな気がするだけ。」

「本当にいるかどうかもわかんないからな。無理に信じなくても良い。けどもし、あいつが来たら絶対に生き残ろうぜ。」

「うん!」

「わかった。」

俺たち3人は何があろうともずっと一緒だ。今までも、これからも。

その日の夜、俺はご飯を食べるとすぐに寝てしまった。

「キャーーーーーー」

その悲鳴と共に俺は目が覚めた。

「何があったんだ?」

俺は一抹の不安を抱えて外に出ると、そこには奴がいた。

そうアラクネがそこにはいたんだ。

「そうだ!シンスケはどこに?」

「きっと、家に居ると思う。」

そうハルカが言った。

「今すぐ行くぞ!!」

シンスケに会いに行くとシンスケは怯えていた。

「もうダメだ!!僕はここで死ぬんだ!!」

俺とハルカはシンスケをどうにか落ち着けるのに必死だった。

「シンスケ!落ち着け!!まだ焦る時じゃないだろ!!早く避難を!!」

「そう!シンスケ親と一緒に早く避難して。」

すると次第にシンスケは落ち着いた。

「わかった。2人は?早く避難しようよ。」

「すまん。シンスケ。俺は母さんと父さんの一緒に行く。」

「私もスグルと一緒に行く。シンスケは先に避難しておいて。」

「ダメだよ!!そっちは化け物が!!」

シンスケが何か言っていた気がしたけど今は聞き直してる暇なんかない。

「ハルカ!急ぐぞ!」

「わかってる。」

俺とハルカは再び家に向かった。

だがもう遅かった。

俺とハルカが見たのは父さんと母さんがアラクネの口の中に入っていく光景だった。

「スグル、ハルカ!今すぐ逃げろ!!」

そう父さんが言った。

「嫌だよ!ハルカ!助けるぞ!」

「無理だよ。スグル。もう、2人は…」

2人はもうアラクネの口に入っていた。

「じゃあ、あいつの口の中に入って助けてくる!」

「無理だよ!!スグル!!逃げなきゃ!」

ハルカがそういうと俺とハルカが誰かに抱えられた。

「ユウトさん!?」

「もう無理だ!スグル!早く逃げろ!」

ユウトさんは僕らに狩りの仕方や釣りの仕方など、沢山のことを教えてくれた恩人だ。

「でも母さんが父さんが!!」

「諦めろ!例え勝てたとしてももう2人は帰ってこない!!」

俺はアラクネの方を見ながらユウトさんにそう言った。

「ダメだ!追いつかれる!!」

ユウトさんが言ったら路地裏に逃げ込んだ。

「いいか?2人とも。お前たちはあっちの方に逃げろ。」

そう指差したのはこの国の中央部分。

「ユウトさんは?ユウトさんはどうするの?」

「俺はお前たちが逃げる時間をかせぐ。」

「早く行け!!!!」

ユウトさんがあんなにも大っきな声を出したのは初めてだった。

「ダメだよ!ユウトさんも一緒に!!」

「いいから早く行け!!俺はお前たちを死なせたくない!!!」

「行こう!スグル!ユウトさんが時間を稼いでくれてる間に!!」

俺はハルカと一緒に中心に向かって走り出した。

少し経って後ろを振り返ると、そこには身体がないユウトさんがいた。

「よくも!!よくも!俺たちの生活を!」

俺たちは全力で走りながらそう叫んだ。

中心部まで逃げ込むとすぐさま強固な壁を設置し始めた。

「待て!まだ向こうに人が!」

「もう無理だ!すぐそこまで来ている!!」

そう兵士さんたちが話していた。

シンスケは無事だろうか?

「おーい!スグルー!!」

呼ばれた方を見てみるとそこにはシンスケがいた。

「シンスケ!無事だったか!」

「僕は別になんともないけど2人は両親たちはどうしたの?一緒に避難するって言ってたじゃないか?」

「遅かった。」

「え?なんて?」

「遅かったんだ!!何もかも!!」

俺は俺の非力さを憎んだ。

「スグル。落ち着いて。今は衝動的になっている場合じゃない。」

「そうだよ!スグル!」

「俺は母さんと父さんだけじゃなくユウトさんまで死なせてしまった。」

「!ユウトさんまで…」

「俺達にはもう何も残ってない。もうおしまいなんだ。」

「スグル。でも私たちは3人生き残れた。あの約束は果たせそうだよ。」

「でも…俺は、俺は」

「そうだ!スグル!スグルは敵討ちをしたくないかい?」

「そんなのしたいに決まってるだろ!あの3人の仇を絶対に取ってやりたいよ!」

「でも…そんなのできるわけがない。」

「出来ないとは限らないよ?」

「どうゆうこと?」

「スグルの記憶を頼るんだ!旧人類の記憶を!」

「そうか!その手がある!」

「なら尚更私たちは死ねなくなった。あと三年後には兵役があるはず…そこで私たちは強くなるべき。」

「そうだな!絶対にそれまで3人全員死なずに生きよう!」




アラクネ!豆知識!

この国には10歳になると10年間の兵役がある。

3年間訓練兵として心身共に鍛え、

その後7年間は自分の志望した兵団に入る。

一つ目はこの国の秩序を守る警察の役割を果たす

   『其の筋兵団』

二つ目は主に政治を担っている

   『政界兵団』

そして新たにアラクネから奪われた土地を奪還する

   『返報兵団』

この三つが存在する。

それぞれ求められている能力があり、其の筋兵団は平均的な能力が必要とされている。大抵の兵士はここに所属している。

次に政界兵団は優れた頭脳を持ち独占欲の少ないものが必要とされている。

そして返報兵団は優れた運動能力を必要とされている。

この兵団だけ命がかかっていることもあり、最も兵員が少ない兵団であり、かつ最も強力な兵員が揃っている兵団となっている。

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