(241)しんしん

 昨日の夜から都内は大雪になり、道路に降り積もる雪は10cmを超えた。


 雪は湿った重たいタイプで、雪が積もった道路を歩くとビチャビチャと水しぶきを上げる。


 よく「雪がしんしんと降る」なんて言うが、今回の雪は「ボタボタ」と降る感じで、「しんしん」なんてお上品なものではなかったな。


 というか、そもそも「しんしん」って何だろな。


「雪やこんこん」もよく解らない表現だが、「しんしん」というのは雪が降る時だけに使う擬音の様に思われる。


 何となく静かに雪が降る様を見ていると「しんしん」という言葉に違和感は無いのだが、とはいえ実際に「しんしん」という音が鳴っている訳では無い。


 誰が考えた表現かは知らないが、何とも美しい表現ではなかろうか。


 僕が小説を書く時に使う擬音は、どうしても「実際の音を文字にする」という感じで、何となく品が無い気がしなくもない。


 が、「しんしん」というのは何とも美しい雪景色が瞼に浮かぶから不思議だ。


 もしかしたら「しんしん」というのは擬音などでは無く、情景を表現する言葉なのかも知れない。


 つまり、音が無い情景を「し~ん…」と表現する事がある様に、雪が降る美しい様を「しんしん」と表現しているのかも知れないという事だ。


 だとすると、これは「ギラギラ」とか「キラキラ」みたいに、状態や見た目を表現する言葉と同類という事か。


 と思ったが、そう定義付けるには無理がある様にも思える訳で。


 だって、一面の銀世界を見た時に、


「うわー、しんしんとしてるな~!」


 とはならない訳で。


「うわ~、積もった雪がキラキラしてる~!」


 とかの方が自然な感じがするのではないだろうか。


 となると、やはり「しんしん」の正体が分からなくなってくる訳で。


 擬音でもなく見た目の表現でも無いなら、この「しんしん」とは一体何者なのだ。


 で、どうしても気になったので調べてみると・・・


 何と、これは「音が無い静けさを表現する言葉」という事だった。


 つまり「しんとする」という言葉の「しん」の部分を「しんしん」と繰り返す事で「沢山の雪が音も無く静かに降る様」を表現しているのだというではないか。


 なるほど、そう言われれば納得せざるを得ないな。


 乾いた軽い雪が音も無く降って来る様を「しんしんと降る雪」と表現するのが正しい使い方という訳だ。


 なるほど、勉強になったな。


 では・・・、都内に降る、この重たい湿った雪が降る様はどう表現してやるのがいいんだろうな・・・


 何となく雪が降る景色を眺めながらしばらく考えてみたが、あまりいい表現が思いつかないな。


 あえて表現するなら・・・・・・ボトボト?


 相変わらず、表現力の乏しい今日の僕なのであります。

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