(231)銀行

 仕事の途中で銀行のATMでお金を下ろした僕なのだが、最近はコンビニにもATMがあるのに、わざわざ銀行のATMでお金を下ろしている自分を客観的に見て変な気分になっている。


 わざわざ銀行のATMに行った理由は、単に「手数料がかからないから」なのだが、銀行まで片道5分歩くか、オフィスの隣にあるコンビニに行くかで考えれば、本来は「僕がケチった手数料は、わざわざ銀行まで往復するだけの価値がある金額か」を考えるのが経営者の考え方な訳で。


 僕は一応経営者なので、コストについてはシビアであるべきだとは思う。


 コンビニATMの手数料は110円。


 銀行までは歩いて往復10分。


 つまりは時給660円以下の人なら銀行を往復する価値はあるが、それ以上の時給の人は手数料を払ってでもコンビニのATMを使う方がコスパがいい訳だ。


 しかし…


 と僕は思うのだ。


 そもそも「銀行の仕事って何なんだろうな」と。


 銀行の仕事とは、元々は「きんを預けた人に預かり証として紙幣を発行する」というものだった。


 やがて、紙幣がきんの代わりに市場で流通する様になり、しまいにゃ「銀行が預かっているきんの総量より多くの紙幣を発行する」という事になってしまった訳で。


 で、世界中でそういう事をしていたもんだから、「もうきんの裏付けの無い紙幣が流通しまくってるんだから、『金本位制きんほんいせい』は撤廃てっぱいすべきだ!」という、資本家達の勝手な論理で政治が動き、結果的に、本当に「金本位制は撤廃」となった訳だ。


 で、日本銀行は「ならばいくらでも紙幣を刷ってもいいって事だな!」となった訳だが、さすがに無尽蔵に紙幣を印刷するのは「紙幣に対する信用が落ちる」という事で、「信用創造」という新しい形で資産を増やす事にした訳だ。


 信用創造とは、いわば「返済能力のある人に金利付きで借金させて、返済時の金利分を利益として儲ける」というビジネスモデルの根幹となる仕組みだ。


 これは銀行による「融資」というサービスと、カード会社による「クレジット決済」というサービスの2本立てで世界中に広まった訳で。


 で、だれもが銀行にお金を預ける事になり、それを担保に「融資を受ける」のが当たり前の社会になった訳だ。


 しかし、30年前に「バブル崩壊」が起こり、借金した人が返済できなくなるという事例が多発した。


 これにより、人々が借金が出来なくなって、銀行が儲からなくなってきた訳だ。


 で、次に「高金利で信用の低い人にも融資をしよう」という訳で、「消費者金融」という新しいモデルが流行した訳だ。


 これで暴利を貪った金融機関だったが、当然こんなビジネスモデルが長続きする訳も無く、20年前には返済できなくて自己破産する人が続出した訳だ。


 で、その時に「消費者金融の悪質な取り立て」が問題になり、「グレーゾーン金利の撤廃」というのが法整備された事で、消費者金融業者もどんどん廃業していった訳だ。


 おかげで銀行は融資する先が無くなってしまい、今では「資産運用」が一番の収益源になってしまった訳だ。


 しかし、やはり「融資」によって得られる儲けを忘れられない金融機関は、ローン商品を増やしていき、これまた政治的な力を使って「成人の定義を18歳に引き下げ」を実現し、18歳からローンを組ませるサービスを展開した訳だ。


 ・・・・・・・・・何というか、浅ましいな。


 で、そんな「青田刈り」を続けてきた結果、若者市場は「ハゲ田」になってしまい、今や信用力のある若者は随分と少なくなってしまったらしい。


 ただでさえ少子化なのに、愛されて産まれてきて、両親の無償の愛と努力によってやっと18歳まで育った子供達の「信用力」を狙う銀行達。


 そう考えると、「銀行」って恐ろしい組織だなと感じてしまう訳で。


 でも、資本家って「銀行」が大好きなんだよね。


 だって、「お金を借りなくても充分お金持ち」な資産家ほど、銀行から融資を受けているのが現実な訳で。


 何故かって?


 それは、「借金には所得税がかからないから」なんだよね。


 つまり、資産を現金じゃない形で沢山持っている人は、資産を担保にいくらでも借金をして、非課税で生活できるという仕組みな訳だ。


 そして、「そういう人を顧客にしたい」と資産家との接点を持とうとしているのが「銀行」という組織な訳で。


 つまり、僕みたいな庶民は眼中に無いのが「銀行」なんだよな。


 ・・・・・・・・・なんだか、空しくなってきたな。 


 そろそろ銀行からお金を引き出して、信用金庫とかに移すべきなのかも知れないな。


 たかがATMに行っただけで、そんな事を考えてしまう、ちょっと精神的に問題があるかも知れない、今日の僕なのであります・・・

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