ことばの悦楽

（230）公平と平等

　よく国家の統治において、その国が目指す方針や大義を示す言葉の中に「自由、平等、平和」みたいなのがある。

　日本においても同じで、「人は皆平等で、生まれや個性で差別はされないよ」という価値観を共有している訳だ。

　が、現実はどうかと言えば、「生まれや個性で不平等な人生を送る事になっている」のではなかろうか。

　これはこれで大問題なのだが、実は僕は「人々が求めているのは、平等よりも公平では無いか」という思いがあり、むしろこちらこそ突き詰めるべき問題では無いのかと考えている訳だ。

　個人的には「平等」という言葉の方が好きな僕だが、「公平」である事を必要とする人々が増えているのだとすれば、それは社会が不健全だからではないかとも思う訳で。

　生まれや個性に関わらず、人々は皆平等に成功のチャンスが与えられるとしよう。

　で、努力した者は成功し、怠けた者は成功出来ない社会になる訳だ。

　これは健全だと思うんだよね。

　でも、一部の者が大成功し、大半の者が成功出来ない社会の場合、「平等なんて嘘だ！　公平な社会を目指すべきだ！」となる訳で、正に今の日本がそんな感じだと思う訳だ。

　成功者視点で見ると「何言ってんだ！　俺達は努力したんだ！」と思うだろうし、成功出来ない人々視点だと「努力しても報われないのはお前らのせいだ！　大儲けしてるんなら社会に還元しろ！」みたいな気持ちになる訳で。

　例えば、人々が「人間らしい生活を送る為に必要なお金が毎月20万円」だとしよう。

　毎月200万円稼ぐ人は、軽く20万円以上稼いでいる訳だから、贅沢しても良いだろう。

　毎月15万円しか稼げない人は、「あと5万円足りない！　俺達は人間扱いされてないんじゃないのか！」と思いながら何とかかんとかやり繰りをして毎月を生きる訳だ。

　これが単に努力の差によるものなら仕方が無いと思えるかも知れないが、現実は「生まれや個性によって、努力が報われる人と報われない人がいる」みたいな感じになっている訳で。

　報われない人々は、そもそも「人間らしい生活」が出来ていない。

　だから、せめて「人間らしい生活」を送りたくて「公平」を望むのだろう。

　報われている人は、「今の仕組みだからこそ成功出来た」ので、今の仕組みを壊したく無い事だろう。

　今の社会は、こうした「上下の対立」が起きているという事なんだろうな。

　よく、ネトウヨとかパヨクとか、ネット社会では「右か左か」のイデオロギー対決をよく見るが、「上下の対立」を真剣に議論されているのをあまり見た事が無い。

　報われない人々にはぜひとも「公平を望むよりも、そもそも平等ではない今の社会を真剣に見直して欲しい」と願う訳です。

　僕も報われない人だから、社会を真剣に見て、政治を真剣に語る様にしている。

　報われない者同士で「右だ左だ」と石を投げ合っても「上から見ている者は笑っているだけ」だ。

　彼等が嫌がる事とは、「自分達だけが成功する様に社会をコントロールし、平等にならない様に政治をコントロールしている事」が明るみに出て、彼等自身が社会的に不評を買う事だ。

　だから、ちゃんと社会を見て、日本に住む人がみんな幸せになる為にはどうすれば良いのかを一緒に考えて行きたいと思う訳です。

　カクヨムに素晴らしい作品を残している作者の皆さんには、きっと日本を良くする為のシナリオが書ける筈だと、僕は個人的に思っている訳で。

　そんな作品を僕も残していきたいし、そんな作品を読みたいとも思う訳で。

　政治家の裏金報道を見ながら日本を憂いてしまう、そんな今日の僕なのであります。