(229)役割語
1月16日(火)、皇居で「講書始の儀」が行われたそうだ。
様々な知識人が皇居を訪れ、天皇皇后両陛下を始め、皇太子殿下等も知識人から様々な講義を受けるというものだ。
今年は愛子様も初めて参加されたという事で、僕は何となくその番組を見ていた訳だ。
僕が最も興味を引いたのは、一番最初に講義を始めた、大阪大学の金水名誉教授が語った「ことばのステレオタイプ『
この「
「その秘密は僕が知っている」
「その秘密は俺が知っているぜ」
「その秘密はわしが知っているのじゃ」
「その秘密は私が知っているわ」
これらのセリフは、文字にして読んだだけで「どんな人物像か」が容易に想像できる役割を持っているという訳だ。
特に「その秘密は俺が知っているぜ」や「その秘密はわしが知っているのじゃ」などは、漫画やアニメ、小説の中などではよく聞かれるが、現実にはあまり聞かない言い回しだという。
うむ、確かに。
しかし、色々な作品の中ではこうした表現がよくされている訳で、こうした「現実には使われない様な言い回し」によって、人物描写を最小限に抑えられるというメリットもあるという訳だ。
しかも、ここには読者の「ステレオタイプ」が発動しており、「読者の思い込み」によって、こうしたセリフを読むだけでその人物像を想像できるのだという事だ。
なるほどな~。
確かにそうだ。
「その秘密は、わしが知っているのじゃ」
というセリフなど、現実に高齢になった人でも言わない様な言い回しなのに、おそらくこれを呼んだ人は高齢の男性を想像する事だろう。
つまり、読者の「思い込み」によって人物像を想像しているという事だ。
特に映像や画像を使わない小説などの場合は、こうした「読者のステレオタイプ」を存分に活用する事で、世界観を想像しやすくする「役割」を、こうしたセリフが担っているという訳だ。
こうした表現は日本独自のものらしく、「日本語は『役割語』が多い為に、作品の世界観が多彩である」と論じられていた。
しかし、ここで問題になるのが「翻訳」なんだそうで、英語や中国語は「役割語」が非常に少ない為に、日本の作品を英語等に翻訳するのがとても大変なんだそうだ。
「君が好きだよ」
「お前が好きだ」
「あなたが好きよ」
「おぬしを好いておる」
みたいなセリフは、英語にすると全て「I love you」で片づけられるようで、どうしても表現の幅が狭くなってしまうんだそうな。
逆に英語の作品を日本語に翻訳する時は、翻訳者の表現力が多分に作用するという事な訳で。
という事は、表現力に富んだ日本語を使える僕達日本人は、とても幸せな国民なのかも知れないな。
うむ。
やはり日本語はすごいや。
言葉の力をとても感じるもんな。
これからも、もっと日本語を大切にしようと思う、今日の僕な訳であります。
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