(228)無洗米

 昨日、取引業者がオフィスに挨拶に来た。


 どうやらその会社はコロナ禍で求人を中止していたらしいのだが、昨年の夏頃にコロナ禍が明けたのもあって、仕事が増えて人手が足りなくなり、中途採用で若い男を営業として採用したそうだ。


 で、いつもの担当営業と一緒に来た若い男は、平成11年生まれの24歳なんだそうな。


 西暦にすると1999年生まれという事で「世紀末ベビー」等と呼ばれた事もあるらしい。


 なるほど。


「世紀末」と聞くと「北斗の拳」の世界観を想像してしまう僕だが、現実の世紀末では世界が滅亡などしていない訳で。


 で、新年の挨拶も兼ねてしばらく雑談していたのだが、その青年は今年の春から「一人暮らし」を始める予定なんだという話題になった訳だ。


 で、一人暮らし歴の長い僕から「一人暮らしのコツ」を聞きたいという事になり、色々とアドバイスしておく事にしたのだが、そんな中で、


「ご飯を炊くのは面倒じゃ無いですか?」


 という質問があり、何となくその気持ちが分からないでも無い僕は、


「だったら、無洗米にすればいいじゃない」


 と答えた訳だ。


 ところが、ここで思わぬ反応があった。


「え、無洗米って、洗ってない米の事じゃないんですか?」


「「え?」」


 これには僕と担当営業の声が重なってしまった。


「いやいや、無洗米ってのは既に洗ってあるから、もう洗わなくていいって事だよ」


 と、担当営業が慌てて説明するというね。


 その後も少し雑談をしてから彼らと別れた訳だが、僕はその後も「無洗米」の事が頭から離れなかった。


 無洗米。


 確かにそうだ。


 文字だけ見れば「洗ってない米」に見えなくも無い。


 自炊をした事の無い若者が、初めてスーパーで「無洗米」を見たなら、「洗って無い米って何だよ」という感想を持つのも分かる気がする訳で。


 どうせなら「洗浄米」とか「洗米済」とかの方が分かり易い気さえする訳で。


 コレって何故「無洗米」と名付けられたのだろう。


 そもそも誰が名付けたのだろう。


 というか、普段から「無洗米」を目にしていたにも関わらず、何故に僕は疑問に思う事が無かったのだろう…



 そんな悶々とした気持ちのまま、スーパーで「無洗米じゃない方の米」を買った僕なのであります。


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