(224)変態

「キャー! ヘンタイよー!」


 というセリフを聞くと、皆さんはどんな場面を想像するのだろうか?


 街中でコートしか着ていないオジサンがコートの前をはだける姿だろうか。


 学校の教室で男子が女子のスカートめくりをしている情景だろうか。


 人によって想像する情景は様々だと思うが、一様に「人に知られたらドン引きされる姿」の者がそこには居る筈だ。


 さて、皆さんがそんな「変態」だとは思っていないし、今の僕も変態では無い筈なのだが、実のところ少年時代の僕は「変態だったかも知れない」とも思っている。


 少年時代の僕自身の思い出として残っている「変態行為」と言えば、やはり「クラスの女子の縦笛を舐めようとした」というやつだろうな。


 忘れもしない。


 あれは小学6年生だった僕が、何か悪さをして先生に叱られ、「放課後に体育館の掃除をしなさい」という罰を受けた日の事だ。


 何の悪さをして叱られたのかは思い出せないのだが、とにかく体育館の床をモップで何往復も拭くという作業を放課後にさせられた訳だ。


 で、やっと掃除が終わって教室にカバンを取りに入ると、当然教室の中には誰もいない訳で。


 で、クラスのカワイイ女子にほのかな好意を持っていた僕は、彼女の机の横に掛けてある手提げカバンから覗くリコーダーのケースを見てしまった訳だ。


 で、ムクムクと頭をもたげる欲望にあっさり負けた僕は、教室に誰も居ないのをいいことに、彼女のリコーダーをケースから取り出し、彼女が口をつけていたであろう場所に顔を近づけ、クンクンと匂いを嗅いでしまった訳だ。


 しかし、きっと甘い匂いがするに違いないと想像していた僕を襲ったのは、何とも言えない、酸っぱい様な、何かが腐った様な・・・


 とにかく、あまりの臭いに僕は吐き気を覚えてすぐさまリコーダーを顔から遠ざけた訳で。


 あれは、理想とのあまりのギャップに僕の頭がパニックを起こしたのではないかと思っている。


 とにかく、何度か深呼吸をして落ち着きを取り戻した僕は、リコーダーを元通りに戻し、何か裏切られた様な気持ちで、肩を落としながら帰宅の途についた訳だが・・・


 今思えば、あれが僕の人生最初の変態行為だった気がする訳で。


 そんな経験をした僕は、「きゃー! ヘンタイよー!」というセリフを聞くと、どうしてもリコーダーの姿が脳裏をよぎる様になってしまった訳だ。


 もしかしたら、子供時代に犯した「変態行為」の記憶とリンクしているのかも知れない訳で。


 という訳で、今度誰かに訊いてみようと思います。


 どんな情景を思い浮かべるかによって、その人が犯した「変態行為」を垣間見る事が出来るのかを確かめる為に(笑)


 ところで皆さんは、「きゃー! ヘンタイよー!」というセリフを聞いて、どんな情景を思い浮かべますか?

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