(177)チャンス

 今日は徹夜明けにも関わらず、午前の打合せを終えても色々な問い合わせやら資料作成やら何やらで夕方まで休む事が出来ず、朝ごはんは元よりランチする間も無く今という時を迎えている。


 昨年の末頃にも大型案件の受注でドタバタして、年末まで休む間も無いなんて事があったが、どうやら今年も同じ様な感じになりそうだ。


 そして年始からはコンサル業務も行いつつ、倉庫で商品の組み立てや荷造り作業を行い、更に納品の為に全国行脚する事になりそうな感じだ。


 今回は昨年とは比較にならない規模の超大型案件で、僕が自営業を始めてから最大規模の売り上げを記録する事になるだろう。


 受注できる事は嬉しいのだが、僕はしがない個人事業主。


 ただでさえ資金繰りでヒィヒィいう事が多いのに、こんな仕事を受注してしまえば、とんでも無い資金繰りをしなければならない訳で。


 しかし、この仕事を成功させれば、来年の夏からはお金の心配をせずに安心して生活できそうな予感もあり、何が何でもこの仕事を成功させねばと決心をしている僕な訳だ。


 おかげで昨日からほとんど休んでいないのに疲れも感じないし、今はほっと一息入れてカクヨムで執筆などしている訳で。


 こんな仕事は人生で何度も経験できるものではない。


 必ずやり抜いてやろうと決意している。


 で、「この仕事が終わったら、俺、結婚するんだ」みたいなセリフを吐きたい気分になった僕は、このセリフが何か良くない事が起こるフラグに聞こえてしまって恐怖したりもしている訳で。


 この仕事を無事に終えてきちんと入金されれば、税務調査で追徴課税された滞納金など一括で支払い可能になるし、なかなかできなかった彼女へのプレゼントなんかも出来そうだ。


 漫画を描く仕事の効率を上げる為に、液晶タブレットを購入する事も出来るし、ガタがきている愛車の買い替えが出来るかも知れない。


 でも、きっと無理なんだよな。


 僕の過去の例から察するに、こうした大きな仕事をやり遂げた後ってのは、更に大きな仕事を依頼されたりするんだよな。


 でも、それが「成長」ってもんだからな。


 この不景気の中で成長する機会に恵まれたのは奇跡だ。


 これまでの努力が結実した実感もあるし、僕史上最大の試練になるであろうこの仕事を見て、僕は「ワクワク」もしている訳で。


 五十路のロスジェネ男が、やっと掴んだチャンスをどう乗り越えてゆくのか、急にやってきた睡魔に負けそうな頭で、一生懸命考えてみようと思います。


 さて、束の間の休息を得た今日の僕は、これから2日ぶりの入浴を楽しもうと思うのです。

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