(176)読み方

「君は気配りが出来て、いいね〜」


 などと言われた事が無い僕だが、普段から不穏な気配を感じる事が出来ると自負している。


 そこで思ったのだが、「気配り」「気配」は、漢字は同じなのに意味が違う気がしてならない訳だ。


 以前、「最中」が「もなか」なのか「さいちゅう」なのか、はたまた「さなか」なのかという事に触れた事があったが、この様な事例は他にも沢山ある様だ。


 例えば「一回」という漢字を見ると「いっかい」と読みたくなるが、「ひとまわり」とも読める訳で、微妙に意味が異なる。


「下手」という漢字を見れば、「へた」なのか「したて」なのかが悩ましい。文中にあっても「下手に出るな!」みたいなセリフの場合、「へた」でも「したて」でも通じる気がするが、その意味はまったく異なるのではなかろうか。


 これは「上手」も同じで、「じょうず」「うわて」「かみて」などの読み方がある。


 この季節にありがちなのが「寒気」だが、これも気象予報士のメモに「寒気を感じる」なんて書かれたら、「さむけ」なのか「かんき」なのか悩ましいところだろう。


 特に混乱しそうなのは「心中」とかではないだろうか。

「心中を考える」

 なんて中途半端な表現をされると、「心の中を考える」という事なのか「誰かと一緒に自殺を考える」という事なのか、命に関わるだけに読んだ人はそれこそ心中穏やかでない事だろう。


 そう言えば僕が高校生の頃、文化系クラブの部室に「生物部」というのがあったが、誰かのイタズラ書きで、表札の「生物」の部分に「なまもの」とルビをふられていたっけな。


 小説を書いていても「大事」という漢字の使い方に苦慮した事があった気がする。


「これは大事にしないとね」

 というセリフ。


 大切という意味で「大事」と書いたつもりが、ファンタジーで陰謀を巡らせるキャラのセリフだと「大きな出来事にしないとね」という意味に誤解されかねない訳で。


 っていうか、同じ単語で読み方も意味も違う漢字の組み合わせが多すぎやしないか?


 英語の「ミート」が肉だったり会うという意味だったりで混乱していた僕は英語に対して「不完全な言語だな!」なんて悪態をついていたのだが、日本語もなかなかどうして同じ様な例は沢山あるというね。


 とはいえ、僕は日本語しか話せないしな。


 こんな不完全な日本語だけど、これからも愛して行こうと思う今日の僕なのであります。

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