(145)謎

 世の中には僕の知らない事が沢山あって、原因不明のトラブルやら何やらで、色々な良くない事が起こるという事を僕は知っている。


 それらの原因は「謎」で、問題を解決しようにも原因が分からないので解決法も「謎」のままな訳だ。


 そんな中で僕は、謎の「不在者通知書」を手に悩んでいる。


 クロネコのロゴで有名なあの会社の「ご不在連絡票」と書かれた小さな紙が郵便受けに入っていたのだが、特に何かを注文した覚えは全くない。


 荷主の名前が書かれてはいるが、その名前に見覚えも無い。


 何だろうこれは。


 この荷物は運送屋さんに連絡して再配達してもらうべきなのだろうか。


 最近は、どこぞの国の人が日本人に対して色々な詐欺や嫌がらせをしているなんて報道も目にするが、まさか僕も被害者達の内の一人になってしまったのだろうか?


 いやいや、それよりも怖いのは、僕の自宅の住所を、その謎の存在に知られているという事ではないだろうか。


 そんな思いでその不在連絡票を見ていた僕だったのだが、実は今日は在宅ワークをしていて、午前中に別の荷物が届く予定になっている。


 そちらは役所から届く書類だったので相手の正体は明らかだし何が届くかも分かっているのだが、この運送屋の方は何が届くのかは皆目見当もつかない。


 そんな折、玄関のベルが鳴ったので、役所からの書類が届いたのかと思って玄関扉を開けると、そこに居たのはあの「クロネコ」の方だった。


「あの、どこからの荷物か教えてもらえますか?」

 と僕が聞くと、「●●さんからのお荷物です」と言う。


「ちょっと身に覚えが無いんですけど、中身は何か分かりますか?」

 と訊くと、「スミマセン。そこまでは分かりません」と言う。


 するとクロネコさんが、「受け取りを拒否されますか?」と訊いて来たので、僕はしばらく考えた結果「受け取ります」と言ってその荷物を受け取る事にしたのだった。


 で、中に入っていたのは、僕が事務所で使おうとアマゾンで注文した品だった。


 ……


 届け先をオフィスに設定した筈が、どうやら自宅になっていたらしい。


 荷主もアマゾンの名前では無く、どうやらメーカーが直送で配送されたらしい。


 なるほど。


 謎は解けた。


 原因は僕の間違いだった。


 ほんと、世の中の謎の中で、一番の謎は「自分の間違いにどうして気付けないのか」という事なのかも知れないな。


 今日はそんな僕なのでした。

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