(141)なんちゃって

 今日は仕事で顧客との打合せが立て続けに3件あり、都内をウロウロと移動する事になった。


 久々に電車で移動していたのだが、地下鉄の車両の座席に座る事10分程の間、向かいの座席に座っている2人のサラリーマンの会話を聞きながらウトウトしていた。


 サラリーマンは中年男性と若い男性の2人で、若いサラリーマンは今年入社したばかりの新人らしい。


 色々説教じみた話をする中年サラリーマンだが、若いサラリーマンはその話に「はぁ、そうなんですね」と、気の抜けた返事をするばかりで、あまり説教が伝わっている様には見えなかった。


 が、何も若いサラリーマンが悪い訳では無さそうで、その中年サラリーマンの説教の語尾には、ほぼ確実に「な〜んちゃって」というセリフがくっついていたのだ。


 この「なんちゃって」ってのは一体どういう意味なんだろうか。


 本当の言葉の意味は分からないが、恐らくは「今までの話は冗談だよ」という意味で受け止めてしまうのではなかろうか。


 となると、若いサラリーマンがマトモに話を聞きたく無い気持ちもよく分かる。


 僕の上司が毎回そんな語尾を付ける人だったとしたら、「で、結局何が言いたいんですか?」とイライラして聞き返してしまいそうだ。


 僕も時々「なんちゃって」という単語を口にする事はあるが、それは「なんちゃってブランド」みたいに、「偽物」や「イミテーション」の意味で使うくらいだ。


 なので、まじめな話の語尾に「な〜んちゃって」なんて言われたら、ズッコケそうになるかも知れないな。


 もしかしたらその上司は笑いを誘う為にそんな話し方をしているのかも知れないが、笑いにうるさい関西人の僕は、「な〜んちゃって」では到底笑えそうに無い。


 うーん、謎だ。


「なんちゃって」とは、一体どういう経緯で生まれた言葉なのだろうか。


 そして「なんちゃって」が果たすべき使命とは何なんだろうか。


 そんな事を考えている今日の僕の頭の中は、何故か脈絡もなく「トンデラハウスの大冒険」のテーマソングが流れ続けていて困っている。


 ちゃんと仕事しなくちゃな。


 な〜んちゃって。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る