(137)実質?

 普通に生活をしていると、色々な所で「実質無料!」みたいなポスターを見る事がある。


 そう言えば、コロナ禍に政府が行なった制度融資でも「実質金利ゼロ」などと謳っていたっけな。


 僕はこの「実質」という言葉が信じられない。


 本来ならば、実質というのは、その本質を表す表現であるはずだ。


 が、世の中に溢れる「実質」という言葉は、どうにも「本質をごまかす為の常套句」として存在している様にしか見えないのだ。


 だって、本当に無料なら「無料!」と書けばいいだけなんだもの。


 でも「実質無料」ってのは「本当は有料だよ」って事だよね?


 有料のものを「無料」って書くと、それは詐欺になって警察に捕まってしまうから、そうならない様に「実質」という枕詞を付けている様にしか見えない訳で。


 そう考えると、「実質無料」を提供している者は、かなり胡散臭い商売をしていると見た方がいいな。


 そう言えば、政府が行なっていたコロナ融資は「金利ゼロ」だと思われているみたいだけど、これも「実質金利ゼロ」って言ってたのを見逃しちゃならない。


 個人事業主でもある僕もコロナ融資を受けたが、ちっとも金利ゼロなんかじゃないからね。


 コロナ融資とは、最初の3年間の金利を0.1%にして、その後の金利は1.4%位になる。

 で、政府が金利を負担するのは最初の3年間だけなので、3年以上の期間で返済する場合は、しっかり1.4%の金利を自分で支払わないといけない。


 殆どの債務者が8年返済で設定しているあたり、5年分の金利は自己負担しているのだ。


「実質金利ゼロ」の中身はこんな感じな訳だが、政府や金融機関の「実質」がこんなんなんだから、他の企業も当然同じ感じになるよな。


 でも、悪いのは「実質」という言葉では無いよな。


 悪いのは「実質」という言葉の響きを利用して、悪い事を企む者の方だ。


 言葉の力は悪い方向にも大きいが、僕はそんな理不尽とも、正しい言葉の力で戰って行こうと思った昼下りなのです。

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