(104)リベンジ

 よく、再チャレンジする事を「リベンジ」と言う事があるが、英語圏の人にこの言葉を言うと少し嫌な顔をされる事がある。


 どうやら、リベンジというのは「敵討ち」みたいな重い意味が込められた様に聞こえるのだそうで、英語圏では「リトライ」とかで表現するのだそうな。


 先日、とある顧客の元に往訪する為に車で移動し、ビルの駐車場に止めようと思っていたのだが、駐車場が満車になっていて、しばらく駐車場入口のゲートの前で駐車場が空くのを待つ事になった。


 天気も良かったので、何となく窓を開けて車内に風を入れながら待っていると、風に乗って街の喧騒が聞こえてくる。


 その中で、スーツを着た若いサラリーマン3人組の声が一際大きく、


「ぜってーリベンジしたいよな」

「おお、リベンジリベンジ!」

「オッケー、リベンジ行くか」

「イエーイ、リベンジ行こう!」


 みたいなノリで、和気あいあいと駐車場の隣にあるオフィスビルへと入って行った。


 何だろな。


 リベンジってそんなに楽しげなものだっけか?


 もはや、僕の知る「リベンジ」という用語の定義とは別の意味なのかも知れないな。


 言葉の意味なんて、時代と共にどんどん変化しているもんな。


 そうして、なかなか空かない駐車場のゲート前で待つ事更に30分程。


 先程のサラリーマン達がビルから出て来て、


「リベンジ出来て良かったっすね~」


 と意気揚々な様子。


 何のこっちゃと聞き耳を立てると、要は、


「前回は売り切れで食べられなかった海鮮定食が食べられた」


 という事らしい。


 なるほど。


 どうりでご機嫌な訳だ。


 が、リベンジってのとはやはり違う気がする訳で。


 僕が小説の中でこんな出来事を「リベンジ」なんて表現したら、安っぽい物語だと思われないかと心配になりそうな物だが、若者向けの小説はむしろ、こういう表現の方が良いのだろうか?


 だとしたら、僕はもっと若者向けの言語を学ぶ必要がありそうだな。


 ほんと、言葉って生き物だよな。


 扱うのが、ほんと難しいや。


 これからは、頑張ってこういう表現にも理解を深めていくとするかな。

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