(56)誤植

 知らない街をドライブする時の僕は、あちこちにあるお店の看板などを見る様にしている。


 気の利いたキャッチコピーやドギツい言葉でインパクト狙いの安っぽいものまで、色々な看板がある訳だが、そんな中で「どう見ても間違いなんだが」としか思えない看板を見かける事がある。


 そうした看板を何故か平気で掲げられているのを見ると、いったいどんな気持ちでそうしているのかと考え込んでしまいそうになる。


 だって、看板って業者に注文すれば、確実に数万円はかかる。


 大金を支払うんだから、それなりの効果を求めたくなる筈だ。


 なのに、僕が見た自動車整備工場の看板には、社名を間違ったまま放置しているものまであった訳で。


 自動車整備工場「株式会社〇〇モータース」と書かれた大きな看板の横に


「お客様はこちらに駐車して下さい。〇〇モータス」


 モータス?


 何故にモータス?


 しかもその看板がいくつも並べられている。


 一つだけ間違ったという訳でも無いらしい。


 僕なら看板業者に作り直しを依頼するところだが、何故かそこではそのまま看板が掲げられている。


 まったく、気になってしょうがないな。


 しかし、看板の誤植はそれだけではない。


 これまで見たものの中にも色々あった。


「おいしいよ! アイスクムーリ」


「葬儀会場、こさら」


「来場者、駐車状」


「一旦停止、とれま」


「こども薬園」


 ・・・・・・・・・


 なんだろうな、この微妙な気持ちになる看板達は。


 しかし、それでも執筆をする様になった僕は思ってしまうのだ。


「そういえば、僕の誤字脱字もハンパ無いよな」と・・・


 どうやら僕が看板業者に向いていない事だけは確かな様だ。


 開業しても、作り直しだらけで半年で倒産する自信があるね。



 そんな事を考えながら、秋のドライブを楽しむ僕なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る